焼け死んだオオクニヌシを、貝の粉と汁で蘇らせた二柱の女神。
キサガイヒメ・ウムギヒメとは何の神様か
キサガイヒメ・ウムギヒメの漢字表記と読み方
一般にきさかいひめ・うむかいひめと読みます。表記は写本や校訂によって難字を含み、キサ貝比売、𧏛貝比売、蛤貝比売などと示されます。
キサを赤貝とみる説はありますが、文字の成り立ちや「きさげ集めて」の解釈には議論があります。ウムカイも蛤と結びつけられますが、現代語の食材名だけから治療法を再現することはできません。
𧏛貝比売(きさがいひめ)
古事記での表記。「𧏛貝」は赤貝。
蛤貝比売(うむぎひめ)
古事記での表記。「蛤貝」は蛤。
キサガイヒメ・ウムギヒメの物語
オオクニヌシが焼けた石で殺される
八十神は山から赤い猪を追い下ろすと偽り、火で焼いた大石を転がしました。オオクニヌシは猪だと思って受け止め、石に焼きついて死にます。母の刺国若比売が高天原?へ上って願うと、神産巣日神がキサ貝比売と蛤貝比売を遣わしました。
二柱は自分の判断で偶然現れたのではなく、神産巣日神の命を受けた救援者として登場します。
「きさげ集めて」は何を集めたのか
本文の「きさげ集めて」には二つの代表的な読みがあります。一つは、キサ貝の殻を削って粉を集めたという読み。もう一つは、焼けた石に付着したオオクニヌシの身体をこそげ集めたという読みです。
國學院大學の神名解説は、難字の写本差と文章の分析から両説を紹介しています。したがって、赤貝の粉を処方したと一つに確定するのは避けます。
火傷の民間療法だったのか
貝殻の粉と蛤の汁を火傷に用いた民間療法の記憶とみる説があります。しかし、古事記成立期に対応する医療記録が確認できないという批判もあります。また「母の乳汁」に、治療薬ではなく生命を回復させる象徴を見る説もあります。
医薬神としての信仰はある
具体的な処方の復元はできない
この二点を両立させるのが、現在の資料に忠実な説明です。
出雲国風土記の女神と同じか
出雲国風土記には支佐加比売命や宇武賀比売命が登場します。古事記の二女神と同じとみる説がある一方、伝承内容が一致しないため別系統とみる説もあります。
似た名前が地域に残ることは重要ですが、それだけで同一神とは確定できません。神話本文、風土記、神社由緒の三層を分けて確認します。
キサガイヒメ・ウムギヒメの家系図と家族
キサガイヒメ・ウムギヒメの性格と人物像
キサ貝比売と蛤貝比売は、オオクニヌシを救う一場面だけに登場します。確実なのは、二柱が神産巣日神の命を受け、死んだオオクニヌシを回復させたことです。
治療材料や手順には解釈の幅があります。古代の処方をそのまま記録した神話と断定せず、蘇生・母乳・貝の名が重なる場面として読みます。二柱を一人の女神の別名にまとめず、古事記が役割を分けて描く二柱として扱います。
キサガイヒメ・ウムギヒメを祀る神社
静岡県浜松市の岐佐神社は、公式由緒でキサガイヒメとウムガイヒメを祀る社として案内しています。
美保神社の主祭神は三穂津姫命と事代主神であり、貝や出雲との連想だけで二女神の関連社にはできません。祭神名が一致する社へ差し替えました。
岐佐神社の鎮座地は浜名湖と海に近い舞阪です。二女神の神話を参拝先として調べる場合は、古事記の蘇生譚と神社に伝わる地域の由緒を分けて読みます。神社の公式案内が二女神を祭神として明記しているため、単に同名の地名がある場合より根拠が明確です。
キサガイヒメ・ウムギヒメが現代に残した痕跡
この二柱の名は、貝の名に残りました。
赤貝(きさがい): 殻を削った粉が火傷の薬として用いられた記録がある。
蛤(うむぎ): 汁を粉に混ぜて塗ったとされる。
キサガイヒメ・ウムギヒメのご利益
病気平癒・医薬
オオクニヌシを蘇生させた神話と、医療に結びつける信仰による。
キサガイヒメ・ウムギヒメについてよくある質問
キサガイヒメとウムガイヒメは何をした神ですか。
神産巣日神の命を受け、八十神に殺されたオオクニヌシを蘇生させた二柱です。古事記の一場面に登場します。
赤貝の粉と蛤の汁で火傷を治したのですか。
そのように読む説はありますが確定ではありません。キサ貝比売が集めたのは石に付着した身体だとする説や、母乳の生命力を表すとする説もあります。
名前はどう読みますか。
一般にキサカイヒメ、ウムカイヒメと読みます。表記には難字と写本差があり、キサ貝比売・蛤貝比売などと示されます。
どこに祀られていますか。
静岡県浜松市の岐佐神社が、公式由緒で蚶貝比売命と蛤貝比売命を祭神として案内しています。
キサガイヒメ・ウムギヒメと併せて覚えたい言葉・用語
高天原(たかまがはら)
天上にある神々の国。アマテラスが治める。