三輪山に鎮まる神。蛇の姿で現れ、疫病を鎮めたと伝わる。
大物主とは何の神様か
大物主はひとことで言えば山そのものが神である例です。
奈良の三輪山を神体とし、大神神社に祀られます。社に本殿がなく、山を直接拝むという古い形が残っています。
古事記では、オオクニヌシが国作りに行き詰まったとき海を照らして現れた神とされます。蛇の姿で語られることが多く、疫病を鎮めた話でも知られます。
大物主の漢字表記と読み方
読みは「おおものぬし」です。「モノ」は霊的な存在を指す古い語とされます。
いまも「もののけ」という言い方に残っています。「ヌシ」は主なので、霊的なものの主という名になります。
三輪山の「みわ」は、酒を醸す器を指す語とする説があります。大神神社が酒の神とされるのは、この読みと関わります。
大物主大神(おおものぬしのおおかみ)
大神神社が用いる表記。
大物主神(おおものぬしのかみ)
記紀での表記。
大物主の物語
海を照らして現れる
オオクニヌシが国作りを進めていたとき、協力していたスクナビコナが去ってしまいます。
これから一人で、どうやって国を作ればよいのか。
嘆いていると、海を照らしてやって来る神がありました。
私をよく祀れば、ともに国を作ろう。大和の東の山に祀れ。
こうして三輪山に祀られたのが大物主です。オオクニヌシの和魂(にぎみたま)、つまり同じ神の別の側面とする説もあります。
疫病を鎮める
日本書紀は、崇神天皇の代の話を記します。
疫病が流行して民の半数が死んだとき、天皇の夢に大物主が現れました。
これは我が心である。オオタタネコに我を祀らせよ。
探し出したオオタタネコは、大物主の子孫でした。祀らせたところ疫病は止み、国は静まったと記されます。
祟る神を、その子孫に祀らせて鎮める。日本の信仰の基本形がここに現れています。
三輪山伝説 ─ 夜だけ通う男
古事記に、イクタマヨリビメの話があります。
美しい男が夜だけ通ってきて、女は身ごもりました。両親が正体を知ろうと、男の衣の裾に麻糸をつけさせます。
朝、糸をたどると三輪山の社に至り、糸は三巻き(みわ)だけ残っていました。
通っていたのは、大物主だった。
この話は苧環(おだまき)型と呼ばれ、各地に類話があります。三輪という地名の由来としても語られます。
蛇の姿
本殿を持たない社
大神神社には、本殿がありません。
拝殿の奥に三ツ鳥居があり、その先は三輪山そのものです。山を直接拝みます。
神は建物の中にいるのではなく、山にいる。
これは神社建築が生まれる前の形を残したものとされます。日本最古級の神社と呼ばれる理由です。
山は禁足地とされ、登拝には手続きが要ります。
酒の神として
大神神社は、酒造の神としても信仰されます。
日本書紀に、崇神天皇のために高橋活日命が神酒を醸したという記述があります。
この神酒は 我が神酒ならず 倭なす 大物主の 醸みし神酒
毎年11月に醸造安全祈願祭が行われ、全国の酒蔵が参列します。杉玉(酒林)を軒に吊るす習慣も、この社に由来するとされます。
大物主の家系図と家族
大物主の子・子孫: ヒメタタライスズヒメ丹塗りの矢に化けて・大田田根子子孫
大物主の性格と人物像
大物主は、恐ろしさと恵みが同じ神です。
疫病を起こし、それを祀ることで鎮める。正体を見られれば去り、見た者は死ぬ。近づきすぎてはならない神として描かれます。
それでいて国作りを助け、酒を与え、山として在り続ける。祟りと恵みが分かれていないという点で、日本の神の原型に近い姿を保っています。
古事記と日本書紀で大物主の記述が異なるところ
日本神話は一冊にまとまっていません。大物主についても、 古事記と日本書紀で記述が分かれる箇所が1件あります。 どちらか一方に決めず、両方を出典つきで載せています。
記述が分かれるところ
古事記712年
中巻・神武天皇記
- 大物主 ─ 丹塗矢の縁 ─ タマクシヒメ
古事記はオオモノヌシが丹塗矢となってセヤダタラヒメと結ばれたとする。
日本書紀720年
巻第三・神武天皇紀
- コトシロヌシ ─ 熊鰐の縁 ─ タマクシヒメ
日本書紀はコトシロヌシが八尋の熊鰐となって玉櫛媛のもとへ通ったとする。
大物主を祀る神社
大物主を祀る社は、三輪山を中心に広がります。
大神神社が総本社で、各地の大神(おおみわ)神社、三輪神社がその系統です。
酒造の神として、醸造業者が祀る例も多くあります。松尾大社(大山咋神)と並んで、酒の神を祀る二大社とされます。
大神神社(おおみわじんじゃ)
大和国一宮/日本最古級の社
三輪山そのものを神体とし、本殿を持たない。拝殿の奥は山に直接つながる。
毎年11月に醸造安全祈願祭が行われ、全国の酒蔵が参列する。
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大物主が現代に残した痕跡
大物主の名は、地名と習慣に残りました。
三輪(みわ)という地名: 麻糸が三巻き残ったことに由来するとされる。三輪素麺でも知られる。
杉玉(酒林): 新酒ができたことを知らせる、杉の葉の玉。大神神社に由来するとされる。
箸墓古墳: ヤマトトトヒモモソヒメの墓とされる。奈良県桜井市にある。
「もののけ」: 「モノ」は霊的な存在を指す古い語。大物主の「モノ」と同じ。
大物主のご利益
国土安泰
国作りを助けた神であることによる。
疫病除け
崇神天皇の代に疫病を鎮めた話による。
酒造・醸造
日本書紀に神酒を醸した記述があることによる。
縁結び
三輪山伝説で女のもとに通った話による。
大物主が登場するゲーム・アニメ
大物主が登場するゲーム
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大物主についてよくある質問
大物主とはどんな神様ですか。
奈良の三輪山に鎮まる神です。大神神社に祀られ、社は本殿を持たず山を直接拝みます。蛇の姿で語られ、疫病を鎮めた話でも知られます。
オオクニヌシとは違うのですか。
別の神として記されますが、オオクニヌシの和魂(にぎみたま)、つまり同じ神の別の側面とする説もあります。
大神神社に本殿がないのはなぜですか。
三輪山そのものが神体だからです。拝殿の奥に三ツ鳥居があり、その先は山に直接つながります。神社建築が生まれる前の形を残したものとされます。
三輪山伝説とは何ですか。
夜だけ通ってくる男の正体を知るため、衣の裾に麻糸をつけたところ、糸が三輪山の社に至り、三巻き残っていたという話です。三輪という地名の由来としても語られます。
なぜ酒の神なのですか。
日本書紀に、崇神天皇のために高橋活日命が神酒を醸したという記述があります。毎年11月の醸造安全祈願祭には全国の酒蔵が参列します。