比叡山と松尾山に鎮まる山の神。酒造の神としても知られる。
大山咋神とは何の神様か
大山咋神はひとことで言えば山を領有する神です。
古事記に「近淡海国の日枝の山に坐す」と記されます。日枝の山とは比叡山のことです。
名の「咋(くい)」は杭を意味します。山に杭を打って自分の場所とした神、という解釈がされます。京都の松尾大社では酒造の神として全国の酒蔵から崇敬を受けてきました。
大山咋神の漢字表記と読み方
読みは「おおやまくい」です。「咋(くい)」は杭を意味します。
山に杭を打って、自分の場所とする。
土地を領有することを表す名です。オオヤマツミが山そのものの神であるのに対し、大山咋神は山を所有する神という違いがあります。
大山咋神(おおやまくいのかみ)
古事記での表記。
山末之大主神(やますえのおおぬしのかみ)
古事記に併記される別名。
大山咋神の物語
比叡山に鎮まる
古事記は、大山咋神について「近淡海国の日枝の山に坐す」と記します。
近淡海国は近江、日枝の山は比叡山です。琵琶湖の西にそびえる山で、麓に日吉大社があります。
古事記はもうひとつ、「葛野の松尾に坐す」とも記します。こちらは京都の松尾大社です。二つの山に同時に鎮まる神として記されています。
延暦寺が建ち、山王権現となる
比叡山に延暦寺が建てられると、大山咋神は山の地主神として寺を守る立場になりました。
神仏習合が進むと山王権現と呼ばれ、天台宗の守護神として全国へ広がります。
日吉大社の公式は、日吉・日枝・山王神社の総本宮として全国3800余社と称しています。東京の日枝神社もそのひとつです。
松尾大社と酒
京都の松尾大社は、酒造の神として知られます。
渡来系の秦氏がこの地を開き、醸造の技術をもたらしたことによるとされます。境内に全国の酒蔵から奉納された樽が並ぶ光景で知られます。
酒は松尾、と言われた。
いまも醸造業者の参拝が続いています。
秦氏が開いた二つの社
松尾大社の公式は、秦氏という渡来の一族が朝鮮半島との交易に従事していたと記します。
その縁で、航海の安全を祈るために市杵島姫命が勧請されたとされます。松尾大社は大山咋神と市杵島姫命の二座を祀ります。
伏見稲荷大社も秦氏が創祀した社です。京都を代表する二つの社が、同じ一族に由来することになります。醸造・治水・機織といった技術が、この一族とともに入りました。
都の表鬼門を守る
日吉大社の公式によれば、平安京遷都のとき、この地が都の北東(表鬼門)にあたったことから、京都の魔除・災難除を祈る社となりました。
鬼門は災いが入る方角とされます。都を守るために、その方角に社を置いたわけです。
比叡山そのものが都の北東に立ちはだかる位置にあり、山と社と寺が、一体で都を守る配置になりました。
約40の社を「日吉大神」と総称する
日吉大社は、一つの社ではありません。
公式によれば境内に約40の社があり、そのすべてを総称して日吉大神と呼びます。中心となるのが山王七社です。
西本宮 ─ 大己貴神
東本宮 ─ 大山咋神
大山咋神は東本宮に祀られます。西本宮の大己貴神(オオクニヌシ)は、後から大和の三輪山より迎えられた神です。
つまりもとからこの山にいたのが大山咋神で、あとから招かれたのが大己貴神という関係になります。
創祀は崇神天皇7年と伝わる
日吉大社の公式は、およそ2100年前、崇神天皇7年の創祀と伝えています。
延暦寺が開かれるより、はるかに古い時代です。山の神として、寺が来る前から祀られていたことになります。
古事記が「日枝の山に坐す」と記したのは、この状態を指しています。寺が後から来て、その守護神になったという順序です。
全国3800余社へ
日吉大社の公式は、全国3800余の日吉・日枝・山王神社の総本宮と称しています。
広がったのは、天台宗が各地へ寺を建てたためです。寺を建てるとき、その土地の守護として山王を勧請するという形が定着しました。
東京の日枝神社は、江戸城の鎮守として置かれたものです。徳川家が江戸を開くにあたり、比叡山にならって城の守りを配置しました。上野の寛永寺が比叡山、日枝神社が日吉大社にあたります。
大山咋神の家系図と家族
大山咋神の性格と人物像
大山咋神は、場所と結びついた神です。
物語らしい事績はほとんどありません。古事記が記すのはどこに鎮まっているかだけです。
それでも全国3800余社に広がったのは、比叡山という場所が持った力によります。延暦寺の守護神となったことで、寺の広がりとともに神も広がりました。土地に付く神が、土地の重要さで広まった例です。
大山咋神を祀る神社
大山咋神を祀る社は、日吉・日枝・山王を冠します。日吉大社の公式は全国3800余社の総本宮と称しています。
延暦寺の守護神となったことで、天台宗の広がりとともに各地へ勧請されました。東京の日枝神社は、江戸城の鎮守として置かれたものです。上野の寛永寺が比叡山、日枝神社が日吉大社にあたる配置になっています。
一方、京都の松尾大社は酒造の神として独自の信仰を集めました。同じ神でありながら、比叡山系は寺と、松尾は酒と結びついた形です。
松尾大社(まつのおたいしゃ)
二十二社/京都最古級の社のひとつ
酒造の神として全国の醸造業者から崇敬を受ける。境内に奉納された酒樽が並ぶ。
古事記に「葛野の松尾に坐す」と記される社。
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大山咋神が現代に残した痕跡
大山咋神の名は、社名と酒に残りました。
日枝・日吉・山王という社名: 日吉大社の公式によれば全国3800余社。比叡山の日枝の山に由来する。
山王祭: 東京の日枝神社の祭。江戸三大祭のひとつに数えられる。
酒樽の奉納: 松尾大社の境内に、全国の酒蔵から奉納された樽が並ぶ。
大山咋神のご利益
酒造・醸造
松尾大社が酒造の神として知られることによる。
地主・不動産
山を領有する神という名の意味による。
厄除け
山王権現として、寺と土地を守る役を担ってきたことによる。
商売繁盛
日枝神社が江戸の総鎮守とされたことによる。
大山咋神についてよくある質問
大山咋神とはどんな神様ですか。
比叡山と京都の松尾山に鎮まる山の神です。古事記に「近淡海国の日枝の山に坐す」と記されます。松尾大社では酒造の神として知られます。
「咋」はどういう意味ですか。
杭を意味します。山に杭を打って自分の場所とする、つまり土地を領有することを表す名とされます。
大山咋神を祀る神社はどこですか。
京都の松尾大社と、比叡山の日吉大社が中心です。日吉大社の公式は、日枝・日吉・山王神社の総本宮として全国3800余社と称しています。
オオヤマツミとは違いますか。
別の神です。オオヤマツミは山そのものの神、大山咋神は山を領有する神という違いがあります。