ツクヨミとは別系統の月神。壱岐で祀られた。
アメノツキノミタマとは何の神様か
アメノツキノミタマの漢字表記と読み方
読みは「あめのつきのみたま」です。「アメノ」は天の、「ツキ」は月、「ミタマ」は御霊を指します。
天の月の霊という、そのままの名です。
対馬のアメノヒノミタマと、「ヒ」と「ツキ」だけが違います。
同じ形で作られた名であることが、一目で分かります。二柱は、玄界灘の二つの島の神として対応しています。
天月神命(あめのつきのみたまのみこと)
先代旧事本紀での表記。
月神(つきのかみ)
日本書紀の顕宗天皇紀での呼び方。
アメノツキノミタマの物語
顕宗天皇紀の託宣
日本書紀の顕宗天皇紀に、この神が関わる記事があります。
遣任那使の阿閉事代に、月神が憑いてこう告げました。
我が祖先の高皇産霊命は、鎔けあっていた天地を創造した功績がある。民地を私に奉れ。
請うままに献上するならば、福慶があるだろう。
阿閉事代が都へ戻って奏上すると、山城国葛野郡の歌荒樔田が月神のために与えられました。
祭祀を行ったのは、壱岐県主の祖・押見宿禰です。
島の一族が、都の近くに土地を得て神を祀ったことになります。
歌荒樔田と月読神社
与えられた歌荒樔田は、いまどこにあたるのでしょうか。
京都市西京区、松尾大社の境外摂社・月読神社と考えられている。
つまり、壱岐の月神が京都に移されたということです。
月読神社は、いまも松尾大社の南に鎮座します。ツクヨミを祀る社として知られますが、その起こりは壱岐にありました。
壱岐にも月読神社があり、こちらが本社にあたるとされます。長崎県壱岐市芦辺町の箱崎八幡神社が、延喜式神名帳の月読神社の流れを汲むともされます。
日と月がそろって現れる
顕宗天皇紀には、日神の記事も並んでいます。
月神 ─ 阿閉事代に憑き、歌荒樔田を得る。
日神 ─ 同じ阿閉事代に憑き、磐余の田を得る。
同じ人物に、日と月が続けて憑いています。
研究者の北條勝貴は、この対応を重視しました。
祖神がともに高皇産霊であること。祭祀を担う氏族がともに玄界灘の島を本拠とし、卜部を出すこと。
壱岐と対馬の日月信仰が、ある時期に一緒に畿内へ移されたのではないか、という見方です。
ツクヨミとの違い
記紀のツクヨミと、この神は別の神です。
ツクヨミ ─ イザナギの禊?で、右目から生まれた。三貴子?の一柱。
アメノツキノミタマ ─ 高御魂命の子。壱岐県主の祖。
系統がまったく違います。
ツクヨミは記紀の主要な神でありながら、事績がほとんど記されないことで知られます。
一方この神は、具体的な託宣と、土地を得た記録を持ちます。
中央の月神は語られず、地方の月神は行いが記録された。奇妙な逆転が起きています。
アメノツキノミタマの家系図と家族
アメノツキノミタマの性格と人物像
アメノツキノミタマは、土地を求めた神です。
人に憑き、はっきりと要求を告げました。祖先の功績を挙げ、田を寄こせと言いました。そして、実際に得ました。
神話のなかで、これほど具体的な交渉をする神は多くありません。
壱岐という小さな島の神が、都の近くに拠点を得ました。地方の一族が中央に食い込む過程が、託宣という形で記録されているとみることもできます。
アメノツキノミタマを祀る神社
この神を祀るのは、京都市西京区松室山添町の月読神社です。松尾大社の境外摂社にあたります。
日本書紀が伝える歌荒樔田は、この社の地と考えられています。
長崎県壱岐市芦辺町の箱崎八幡神社は、延喜式神名帳に記された月読神社の流れを汲むとされます。壱岐と京都を、この神の名が結んでいます。
月読神社(つきよみじんじゃ)
松尾大社の境外摂社
この神を祀る社。日本書紀が伝える歌荒樔田はこの地と考えられている。
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アメノツキノミタマが現代に残した痕跡
アメノツキノミタマの名は、月読神社に残りました。
歌荒樔田: 山城国葛野郡の地。月神のために与えられた。
壱岐県主: 壱岐を治めた一族。この神を祖とする。
卜部: 亀の甲を焼いて占う職。壱岐・対馬から多く出た。
アメノツキノミタマのご利益
開運
月の神としての性格による。
航海安全
玄界灘の島で祀られたことによる。
アメノツキノミタマについてよくある質問
アメノツキノミタマとはどんな神様ですか。
ツクヨミとは別系統の月神で、壱岐での信仰に由来します。先代旧事本紀では高御魂命の子で、壱岐県主の祖とされます。
ツクヨミと同じですか。
別の神です。ツクヨミはイザナギの禊で右目から生まれた三貴子の一柱、この神は高御魂命の子で壱岐県主の祖です。
京都の月読神社との関係は何ですか。
日本書紀によれば、月神のために山城国葛野郡の歌荒樔田が与えられました。その地が、松尾大社の境外摂社である月読神社にあたると考えられています。
アメノツキノミタマと併せて覚えたい言葉・用語
三貴子(さんきし)
イザナギが最後に生んだ三柱、アマテラス・ツクヨミ・スサノオのこと。この三柱だけが特別に貴い神として扱われる。
禊(みそぎ)
水で身を洗い、穢れを落とすこと。イザナギはこれによって三貴子を生んだ。