ニギハヤヒの子。物部氏の祖。父の代わりに神武へ従った。
ウマシマヂとは何の神様か
ウマシマヂの漢字表記と読み方
読みは「うましまぢ」です。「ウマシ」は美(うま)しで、すぐれている・美しいことを指します。
「マヂ(マデ)」は手とする説が有力です。日本書紀が「真手」の字を当てているのが手がかりになります。
つまり「すぐれた手」、腕の立つ者という意味に読めます。
物部氏が武器の製作と管理を担った一族であることと重なります。
宇摩志麻遅命(うましまぢのみこと)
古事記での表記。
可美真手命(うましまでのみこと)
日本書紀での表記。
ウマシマヂの物語
父が伯父を討つ
ウマシマヂの父はニギハヤヒ、母はナガスネヒコの妹トミヤビメです。
つまりナガスネヒコは伯父にあたります。
神武東征のとき、ニギハヤヒは神武天皇が同じ天の神の子であることを認め、ナガスネヒコを自ら討ちました。
父が、母の兄を殺す。
ウマシマヂは、その直後に神武天皇へ仕えることになります。自分の一族が二つに割れた場面から、この人物の経歴は始まります。
十種の神宝
ニギハヤヒが天から降るとき、十種の神宝(とくさのかんだから)を持っていたと伝えられます。
鏡が二種、剣が一種、玉が四種、比礼(ひれ)が三種。
これを振りながら「ひとつ、ふたつ、みっつ…とを」と唱えると、死者すら蘇るとされました。
布留の言(ふるのこと)と呼ばれる呪法です。
ウマシマヂはこれを受け継ぎ、天皇の身体を守る鎮魂の儀式を行ったとされます。宮中の鎮魂祭の起源とされる伝えです。
物部氏という一族
物部氏は、軍事と祭祀の両方を担いました。
モノ ─ 武器、あるいは霊的な力
ベ(部) ─ 職能集団
「モノ」という語には、武器と霊の両方の意味があります。物部氏がこの二つを兼ねたことと重なります。
石上神宮を氏神とし、朝廷の武器庫を管理しました。
6世紀、仏教の受け入れをめぐって蘇我氏と対立し、物部守屋が敗れて一族は衰えます。日本の宗教史を分けた争いでした。
敗者を取り込む形
ウマシマヂの経歴は、服属した勢力の扱われ方を示しています。
ナガスネヒコ ─ 抵抗して討たれる
ニギハヤヒ ─ 帰順して受け入れられる
ウマシマヂ ─ 有力氏族の祖になる
同じ勢力の中で、扱いが三つに分かれています。
抵抗した者は消され、従った者は取り込まれ、その子孫は朝廷の中枢に入る。
系譜という形で、統合の過程が記録されているといえます。
ウマシマヂの家系図と家族
ウマシマヂの性格と人物像
ウマシマヂは、受け継いだ人です。
自ら戦う場面はほとんどありません。父から十種の神宝を受け、それを天皇のために用いました。
武器を扱う一族の祖でありながら、記録に残るのは鎮魂の儀式です。物部氏が武と祭祀を兼ねたことが、祖の描かれ方にも表れています。
伯父を父が討つという分裂の直後に、新しい秩序の側へ移った人物として位置づけられています。
ウマシマヂを祀る神社
ウマシマヂを祀る社は、物部氏ゆかりの地に分布します。
石上神宮(奈良県天理市)は物部氏の氏神で、十種の神宝の伝えを持つ社です。
大阪の石切劔箭神社は、ニギハヤヒとウマシマヂの父子を祀ります。「でんぼ(腫れ物)の神さん」と呼ばれ、病気平癒の信仰を集めてきました。
ウマシマヂが現代に残した痕跡
ウマシマヂの名は、物部氏の系譜に残りました。
十種の神宝: ニギハヤヒが天から持ち降ったとされる宝。鎮魂の呪法に用いた。
鎮魂祭: 宮中の行事。魂を身体に鎮める儀式。この人物が起源とされる。
物部: 軍事と祭祀を担った氏族。「モノ」は武器と霊の両方を指す。
ウマシマヂのご利益
武運長久
物部氏の祖であることによる。
病気平癒
十種の神宝による鎮魂の伝えによる。
厄除け
石上神宮での信仰による。
ウマシマヂについてよくある質問
ウマシマヂとはどんな神様ですか。
ニギハヤヒの子で、物部氏の祖とされます。母はナガスネヒコの妹で、天の神と先住者の血を半分ずつ引いています。
十種の神宝とは何ですか。
ニギハヤヒが天から持ち降ったとされる十種の宝物です。振りながら数を唱えると死者も蘇るとされ、宮中の鎮魂祭の起源とされます。
物部氏はどうなったのですか。
6世紀に仏教の受け入れをめぐって蘇我氏と対立し、物部守屋が敗れて一族は衰えました。