神武天皇の兄。波を踏んで常世へ渡った。
御毛沼命とは何の神様か
ミケヌはひとことで言えば常世へ渡った兄です。神武天皇の三兄にあたります。
次兄が海に入ったのと同じ場面で、この人物は違う去り方をします。
波の穂を踏みて、常世の国に渡りましき。
波の上を踏んで、常世の国へ渡ったという記述です。死んだとは書かれていません。
御毛沼命の漢字表記と読み方
読みは「みけぬ」です。「ミケ」は御饌、つまり神へ供える食物を指します。
弟である神武天皇の本名は若御毛沼命(わかみけぬのみこと)です。
ミケヌ ─ 御毛沼
ワカミケヌ ─ 若御毛沼
同じ名に「若」が付いただけです。
食物にゆかりの名を持つ兄が、不老不死の国へ去るという形になっています。
御毛沼命(みけぬのみこと)
古事記での表記。
三毛入野命(みけいりののみこと)
日本書紀での表記。
御毛沼命の物語
波の穂を踏む
暴風のなか、ミケヌは去りました。古事記の記述は簡潔です。
御毛沼命は、波の穂を踏みて、常世の国に渡りましき。
波の先端を踏んで、常世へ渡ったというのです。
海に沈んだ次兄イナヒとは、対照的です。
イナヒ ─ 海に入る
ミケヌ ─ 波の上を歩く
下へ行くか、上を行くか。同じ場面で、まったく違う去り方が書かれています。
常世の国とは
死なない去り方
ミケヌについて、古事記は死んだと書いていません。
渡った、とだけ記す。
これは重要な違いです。
イツセ ─ 亡くなった。葬られた。
イナヒ ─ 海に入り、鋤持神になった。
ミケヌ ─ 常世へ渡った。
三人の去り方が、段階的に「死」から遠ざかっています。
末子が残る前に、兄たちが違う形で退場する。物語の整え方が見えます。
高千穂の伝承
日本書紀は、この人物を三毛入野命(みけいりののみこと)と記します。
宮崎県の高千穂神社は、この人物を主祭神として祀ります。
常世へ渡ったあと、高千穂へ戻ってきたという伝承があるためです。
鬼八(きはち)という荒ぶる者を退治した。
高千穂の夜神楽は、国の重要無形民俗文化財に指定されています。
記紀では消えた人物が、地方では生き続けている例です。
御毛沼命の家系図と家族
御毛沼命の性格と人物像
ミケヌは、消えなかった兄です。
古事記は「常世へ渡った」とだけ記し、死を書きませんでした。
そのため、戻ってくる余地が残りました。
実際、高千穂には帰還の伝承があり、いまも主祭神として祀られています。
書き方ひとつで、その後の伝承が変わる。この人物は、その分かりやすい例です。
御毛沼命を祀る神社
ミケヌを祀るのは、宮崎県の高千穂神社です。
常世へ渡ったあと高千穂へ戻ったという伝承により、主祭神として祀られています。
高千穂の夜神楽は国の重要無形民俗文化財で、いまも地域で受け継がれています。
記紀で消えた人物が、地方の社では中心にいるという例です。
御毛沼命が現代に残した痕跡
ミケヌの名は、高千穂の伝承に残りました。
常世の国: 海の彼方にあるとされた不老不死の地。「トコ」は永遠を意味する。
高千穂の夜神楽: 宮崎県高千穂町に伝わる神楽。国の重要無形民俗文化財。
ニライカナイ: 沖縄の理想郷。海の彼方に理想の国があるという考えの系統。
御毛沼命のご利益
厄除け
高千穂で荒ぶる者を退治したという伝えによる。
五穀豊穣
名に「御饌(食物)」を含むことによる。
長寿
常世の国へ渡ったという伝えによる。
御毛沼命についてよくある質問
ミケヌとはどんな人物ですか。
神武天皇の三兄です。東征の途中、波の上を踏んで常世の国へ渡ったと古事記に記されます。
死んだのですか。
古事記は死んだとは書いていません。「渡った」とだけ記されており、そのため戻ってくる余地が残りました。
いまも祀られていますか。
宮崎県の高千穂神社が主祭神として祀ります。常世から高千穂へ戻ったという伝承があるためです。