ワタツミの子。安曇氏の祖神で、穂高見命の名でも伝わる。
ウツシヒカナサクとは何の神様か
ウツシヒカナサクはひとことで言えば海から山へ移った神です。イザナギの禊?で生まれた綿津見三神の子で、海の国津神?にあたります。
多くの史料では穂高見命の名で伝わります。
海の神の子でありながら、信濃の穂高岳に降臨したと伝えられます。海のない山国に「安曇」の地名が残る理由が、ここにあります。
ウツシヒカナサクの漢字表記と読み方
読みは「うつしひかなさく」です。「ウツシ」は現し、つまり目に見える形をとることを指します。
「ヒ」は霊、「カナ」は金、「サク」は割る・切り開くと解されます。
金属を裂く霊力という意味に読めます。
信濃の佐久郡の地名は、この神が開拓したことによる「拆(さく)」だとする説があります。別名の穂高見は、穂高岳という山の名と対応します。
宇都志日金拆命(うつしひかなさくのみこと)
古事記での表記。
穂高見命(ほだかみのみこと)
穂高神社ほか、多くの史料での名。
宇都志日金析命(うつしひかなさくのみこと)
「拆」を「析」と書く例。
ウツシヒカナサクの物語
禊から生まれた海の一族
海の神が山に降りる
この神の最大の特徴は、海の神なのに山に祀られていることです。
穂高神社 本宮 ─ 長野県安曇野市穂高。
穂高神社 奥宮 ─ 長野県松本市安曇、上高地。
長野県は、日本でもっとも海から遠い県のひとつです。
それでも安曇野、安曇という地名が残っています。九州の志賀島を本拠とした海人の一族安曇氏が、内陸へ移り住んだ跡だと考えられています。
穂高神社の御船祭では、山の中で船の形をした山車が曳かれます。
安曇氏という一族
この神を祖とする一族は、広い範囲に足跡を残しました。
安曇氏 ─ 海人を統率した一族。
安曇犬養氏
海犬養氏
本拠は福岡県の志賀島で、志賀海神社が総本社にあたります。金印が出土した島としても知られます。
宮廷では、天皇の食事を用意する内膳司を代々つとめました。
海の産物を献じる役目です。海人の一族が朝廷の台所を預かったという形で、海と権力のつながりが制度に残っています。
各地に残る社
この神を祀る社は、海沿いと内陸の両方に散っています。
穂高神社 ─ 長野県安曇野市。
志賀海神社 摂社 今宮神社 ─ 福岡市東区。
氷鉋斗賣神社 ─ 長野市稲里町。
出水神社 ─ 石川県加賀市橋立町。
胡簶神社 ─ 長崎県対馬市。
分布そのものが、この一族の移動の跡を描いています。
奈良県桜井市三輪には金拆神社があり、名に「金拆」の字が残ります。海から入って山へ抜ける道筋を、社の名が示しています。
ウツシヒカナサクの家系図と家族
ウツシヒカナサクの性格と人物像
ウツシヒカナサクは、移動した神です。
海で生まれ、山に祀られました。九州の島を本拠とした一族が、信濃の谷まで入っていった。その事実が、神の伝えとして残っています。
神話が、実際の人の移動の記録になっている珍しい例です。
同じ綿津見神の子とされるトヨタマビメとタマヨリビメが皇統に入っていったのに対し、この神は一族の祖として残りました。物語ではなく、土地と姓に名を残した神といえます。
ウツシヒカナサクを祀る神社
この神を祀る社の代表は、長野県安曇野市の穂高神社です。穂高見命の名で主祭神とされ、上高地に奥宮、奥穂高岳の山頂に嶺宮があります。
海の神を祀る社が、日本アルプスの稜線にあるという形です。
福岡市の志賀海神社は父にあたる綿津見三神を祀り、その摂社である今宮神社にこの神が祀られます。
ウツシヒカナサクが現代に残した痕跡
ウツシヒカナサクの名は、地名に残りました。
安曇野: 長野県の地名。安曇氏が移り住んだ跡とされる。
穂高岳: 北アルプスの主峰。別名の穂高見命と対応する。
御船祭: 穂高神社の祭。山の中で船の形の山車が曳かれる。
内膳司: 天皇の食事を用意する役所。安曇氏が代々つとめた。
ウツシヒカナサクのご利益
航海安全
海の神の子であることによる。
産業繁栄
安曇氏が内膳司をつとめたことによる。
開拓
信濃を開いたとする伝えによる。
ウツシヒカナサクについてよくある質問
ウツシヒカナサクとはどんな神様ですか。
イザナギの禊で生まれた綿津見三神の子で、海の国津神です。多くの史料では穂高見命の名で伝わり、安曇氏の祖神とされます。
なぜ海の神が山に祀られているのですか。
九州の志賀島を本拠とした海人の一族、安曇氏が信濃へ移り住んだためと考えられています。安曇野という地名がその跡を示します。
トヨタマビメとはどんな関係ですか。
トヨタマビメとタマヨリビメも綿津見神の子とされ、初代天皇の祖母と母になります。ただし古事記がこの神と両女神を明確に兄弟姉妹として結ぶわけではありません。
ウツシヒカナサクと併せて覚えたい言葉・用語
国津神(くにつかみ)
もともと地上にいた神々。出雲の神々が代表。
禊(みそぎ)
水で身を洗い、穢れを落とすこと。イザナギはこれによって三貴子を生んだ。