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日本神話

アメノオシヒ(天忍日命)とは何の神様か|家系図・物語・祀る神社

天忍日命  / アメノオシヒノミコト

天津神

天孫降臨で先頭に立った武神。大伴氏の祖。

アメノオシヒとは何の神様か

アメノオシヒはひとことで言えば先頭に立った武神です。天孫降臨のとき、ニニギの前に立って道を開きました大伴氏の祖とされます。

古事記はその装備を細かく記します。矢筒を背負い、大刀を取り、弓を持ち、矢を手挟んで先導しました。

重武装で先導する姿が、ここまで具体的に書かれる神はめずらしいものです。

アメノオシヒの漢字表記と読み方

読みは「あめのおしひ」です。「アメ」は天「オシ」は大きい・強い「ヒ」は霊力を指します。

「オシ」は、アメノオシホミミの「オシ」と同じ語です。勢いの盛んなさまを表します。

天の強い霊力という意味に読めます。

武を担う一族の祖にふさわしい名です。実際、この神の子孫である大伴氏は、代々宮門の警護を務めました。

天忍日命(あめのおしひのみこと)

古事記での表記。

天忍日命(あまのおしひのみこと)

別の読み方。

アメノオシヒの物語

  1. 装備が細かく書かれる
  2. 大伴と久米
  3. 海行かば
  4. 先に立つということ

装備が細かく書かれる

天孫降臨の場面で、古事記はこう記します。

天忍日命、天津久米命の二人、天の石靫を取り負ひ、頭椎の大刀を取り佩き、天の波士弓を取り持ち、天の真鹿児矢を手挟み、御前に立ちて仕へ奉りき。
石靫(いしゆき) ─ 矢を入れる筒
頭椎の大刀(くぶつちのたち) ─ 柄頭が槌状の大刀
波士弓(ははゆき) ─ 弓
真鹿児矢(まかごや) ─ 矢

装備を一つずつ挙げるという書き方は、記紀でも異例です。

武装そのものを誇る記述になっています。

大伴と久米

先導したのは、二柱です。

天忍日命 ─ 大伴氏の祖
天津久米命 ─ 久米氏の祖

この二つの氏族が、以後天皇の身辺を守る役目を担いました。

大伴氏は宮門の警護、久米氏はその配下として実働にあたったとされます。

神武東征でも、道臣命(大伴氏)が大来目を率いたと記されます。降臨のときと同じ組み合わせが繰り返されています。

一族の由緒を、神話にさかのぼって主張する形です。

海行かば

大伴氏は、自らの由緒を強く意識した一族でした。

万葉集の編者とされる大伴家持は、こう詠みます。

海行かば 水漬く屍 山行かば 草生す屍 大君の 辺にこそ死なめ かへり見はせじ

海で死ねば水に漬かる屍、山で死ねば草の生える屍。天皇のそばでこそ死のう。振り返りはしない

一族が代々受け継いだ誓いを詠んだ歌です。

この歌は昭和期に曲が付けられ、戦時中に広く歌われました。神話の一族の誓いが、近代に呼び出された例です。

先に立つということ

アメノオシヒの役目は、前に立つことでした。

御前に立ちて仕へ奉りき。

天孫の前を歩く。それが仕えるということでした。

危険があれば最初に受けます。道を切り開くのも先頭です。

猿田彦が外から迎えて導いたのに対し、アメノオシヒは内から守って進んだという違いがあります。

護衛という職能の起点が、この神に置かれています。

アメノオシヒの家系図と家族

アメノオシヒの親: 道臣命大伴氏の祖と、その子孫

アメノオシヒのきょうだい: アマツクメ対等の立場で先導する

アメノオシヒの性格と人物像

アメノオシヒは、装備で語られる神です。

台詞がありません。性格も記されません。あるのは、何を身につけて、どこに立ったかだけです。

しかしそれで十分でした。大伴氏にとって重要だったのは、祖が天孫の前に立っていたという一点です。

位置が身分を表しました。前に立つ者が、もっとも近い臣下です。

その位置を、神話にさかのぼって確保したことになります。

古事記と日本書紀でアメノオシヒの記述が異なるところ

日本神話は一冊にまとまっていません。アメノオシヒについても、 古事記と日本書紀で記述が分かれる箇所が1件あります。 どちらか一方に決めず、両方を出典つきで載せています。

記述が分かれるところ

古事記712年

上巻・天孫降臨の段

  • アメノオシヒ ─ 対等の立場で先導する ─ アマツクメ

古事記では対等に書かれる。

日本書紀720年

巻第二・第九段 一書

  • アメノオシヒ ─ 率いられる ─ アマツクメ

日本書紀では天槵津大来目が天忍日命に率いられたとする。

アメノオシヒを祀る神社

アメノオシヒを祀る社は、大伴氏ゆかりの地にわずかに残ります。

大伴氏は平安時代に衰え、伴(とも)氏と改称したのち、応天門の変で失脚しました。

そのため、この神を祀る社もほとんど残っていません。

奈良県の久米御縣神社など、久米氏に関わる社に伝えが残ります。

橿原神宮(かしはらじんぐう)

別表神社

地図で開く

橿原神宮の住所: 奈良県橿原市久米町934

橿原神宮の御祭神: 神武天皇・媛蹈鞴五十鈴媛皇后

橿原神宮のご利益: 国土安泰

アメノオシヒを祀る社ではない。地名の「久米」は久米氏にちなむとされる。

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橿原神宮へ参拝するときの、奈良県橿原市の宿を探せます。

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アメノオシヒが現代に残した痕跡

アメノオシヒの名は、大伴氏の歌に残りました

海行かば: 大伴家持の歌。一族が代々受け継いだ誓いを詠む。昭和期に曲が付けられた。

久米: 奈良の地名。ともに先導した天津久米命の子孫、久米氏にちなむとされる。

アメノオシヒのご利益

武運長久

天孫を守って先導した武神であることによる。

厄除け

前に立って危険を受ける役目による。

アメノオシヒについてよくある質問

アメノオシヒとはどんな神様ですか。

天孫降臨のときニニギの前に立って先導した武神です。大伴氏の祖とされます。

なぜ装備が細かく書かれているのですか。

理由は分かっていませんが、武を担う一族の由緒を示す記述と考えられています。矢筒・大刀・弓・矢が一つずつ挙げられています。

猿田彦とはどう違うのですか。

猿田彦は外から迎えて導いた神、アメノオシヒは内から守って先頭を進んだ神です。役割が異なります。

アメノオシヒと併せて覚えたい言葉・用語

天孫降臨(てんそんこうりん)

アマテラスの孫ニニギが高天原から地上へ降りたこと。