オオヤマツミの娘。名に「散る」を持つ。
コノハナチルヒメとは何の神様か
コノハナチルヒメの漢字表記と読み方
読みは「このはなちるひめ」です。「コノハナ」は木の花、「チル」は散ることを指します。
「コノハナ」は桜を指すとする説が一般的です。
姉妹の名を並べると、意図が見えてきます。
コノハナサクヤヒメ ─ 木の花が咲く
コノハナチルヒメ ─ 木の花が散る
イワナガヒメ ─ 岩のように長い
咲く・散る・変わらない。三つで時間のすべてを表しています。
木花知流比売(このはなちるひめ)
古事記での表記。
木花散姫(このはなちるひめ)
別の字を当てた表記。
コノハナチルヒメの物語
オオヤマツミの娘たち
オオヤマツミは山の神です。その娘たちが、日本神話の要所に現れます。
コノハナサクヤヒメ ─ ニニギの妻。天皇家の祖。
イワナガヒメ ─ 醜さゆえに返され、天皇家に寿命を与えた。
コノハナチルヒメ ─ ヤシマジヌミの妻。オオクニヌシの祖先。
天孫の系統と、出雲の系統の両方に、この一族の娘が入っています。
山の神の家が、両方の血筋の起点になっている形です。
咲く、散る、変わらない
三姉妹の名は、時間の三つのあり方を表しています。
サク(咲く) ─ 生まれ、盛る
チル(散る) ─ 衰え、失われる
イワナガ(岩のように長い) ─ 変わらず続く
ニニギはサクヤヒメを選び、イワナガヒメを返しました。
そのため天皇の寿命は、花のように短くなったとされます。
チルヒメは、その選択のもう一方の結果を名に持っています。咲けば、必ず散ります。
出雲の系譜に入る
コノハナチルヒメが嫁いだのは、ヤシマジヌミという神です。
スサノオとクシナダヒメの子孫にあたります。
古事記は、スサノオからオオクニヌシまでの系譜を記します。六代にわたる長いものです。
スサノオ → ヤシマジヌミ → … → オオクニヌシ
その二代目の妻が、コノハナチルヒメです。
山の神の血が、出雲の系統に入るという形になっています。
書かれない神の役目
この女神には、物語がありません。
系譜に一度、名が出てくるだけ。
それでも置かれているのは、姉妹の名と対をなすためと考えられます。
サクヤヒメだけでは、「咲く」の意味が際立ちません。散る者がいてはじめて、咲くことに意味が出ます。
記紀には、こうした対照のために置かれた神が数多くいます。
書かれないこと自体が、構造の一部になっています。
コノハナチルヒメの家系図と家族
コノハナチルヒメの性格と人物像
コノハナチルヒメは、名前で語る神です。
物語も、台詞も、事績もありません。あるのは名だけです。
しかしその名が、日本人の時間の感じ方を一語で表しています。
咲いたものは、散る。
姉のサクヤヒメが華やかに語られるのに対し、この女神は系譜の一行に留まりました。
それ自体が「散る」という名にふさわしいとも読めます。
コノハナチルヒメを祀る神社
コノハナチルヒメを祀る社はほとんどありません。
姉のコノハナサクヤヒメが全国約1,300社の浅間神社に祀られるのとは、対照的です。
島根県など、出雲の系譜にゆかりの地にわずかな伝えが残ります。
同じ父を持つ姉妹でも、祀られ方には大きな差があります。
コノハナチルヒメが現代に残した痕跡
コノハナチルヒメの名は、姉妹の対比に残りました。
咲く・散る: 姉妹の名に込められた対比。日本人の時間の感じ方を表す。
コノハナ: 木の花。桜を指すとする説が一般的。
コノハナチルヒメのご利益
五穀豊穣
山の神の娘であることによる。
縁結び
婚姻によって系譜をつないだことによる。
コノハナチルヒメについてよくある質問
コノハナチルヒメとはどんな神様ですか。
オオヤマツミの娘で、スサノオの子孫ヤシマジヌミの妻です。名は「木の花が散る」ことを意味します。
コノハナサクヤヒメとの関係は何ですか。
姉妹にあたります。「咲く」と「散る」で名が対をなし、イワナガヒメの「変わらない」とあわせて三つで時間のあり方を表しています。
なぜ物語がないのですか。
姉妹の名と対をなすために置かれた神と考えられています。散る者がいてはじめて、咲くことに意味が出るためです。
コノハナチルヒメと併せて覚えたい言葉・用語
国津神(くにつかみ)
もともと地上にいた神々。出雲の神々が代表。