十七世神の最後の神。この名で出雲の系譜は終わる。
トオツヤマサキタラシとは何の神様か
トオツヤマサキタラシはひとことで言えば系譜の終点です。古事記にのみ登場し、十七世神の最後の神にあたります。
初代ヤシマジヌミの十四世孫です。
古事記は、この神の名を記したところで系譜を止めます。以降の記述はありません。
トオツヤマサキタラシの漢字表記と読み方
読みは「とおつやまさきたらし」です。「トオツ」は遠方の、「ヤマサキ」は山の崎、「タラシ」は足らしを指します。
名義は「遠方の山の崎が満ち足りていること」と考えられます。
「トオツ」は、母の名遠津待根神から承けたものです。
「ヤマサキ」は山の先端で、そこは台地です。山からの水が潤すため、穀倉地帯を形成します。「タラシ」は充足を意味します。
遠津山岬多良斯神(とおつやまさきたらしのかみ)
古事記での表記。
遠津山岬帯神(とおつやまさきたらしのかみ)
別の表記。
トオツヤマサキタラシの物語
十五柱の最後
なぜここで終わるのか
古事記は、この神のあと何も書きません。
系譜は続かない。事績も語られない。
唐突に終わります。
理由については、いくつかの見方があります。
代替わりを繰り返すうちに、神よりも人に近づいたという指摘があります。神の系譜から人の系譜へ移り変わる境目で、書くのをやめたという読み方です。
あるいは、単にそこまでしか伝わっていなかったのかもしれません。
いずれにせよ、出雲の系譜はこの名で閉じられました。
満ち足りて終わる
三つの社に祀られる
この神を祀る社は、離れた土地にあります。
鳴海杻神社 ─ 愛知県犬山市羽黒成海郷。主祭神。
山岬神社 ─ 島根県雲南市大東町中湯石。
神足神社 ─ 京都府長岡京市東神足。
山岬神社は、名に山岬を含みます。
神名の一部が、そのまま社名になっています。
神足神社は、長岡天満宮の兼務社です。長岡京市の神足という地名は、この神の名の「タラシ(足らし)」と響き合います。
系譜の最後の神が、地名として各地に残っていることになります。
トオツヤマサキタラシの家系図と家族
トオツヤマサキタラシの親: アメノヒバラオオシナドミ・アメノヒバラオオシナドミ・アメノサギリ母方の祖父・ヤシマジヌミ十四世孫・オオヤマツミ曽祖父にあたる
トオツヤマサキタラシの性格と人物像
トオツヤマサキタラシは、幕を引いた神です。
事績はありません。何もしていません。それでも、古事記の出雲の系譜は、この名で終わります。
「満ち足りている」という名で終わるのは、偶然ではないかもしれません。
長く続いた系譜の最後に、充足を表す言葉を置く。編んだ者の意図があったとすれば、これほど静かな終わり方はありません。終わりを担うことも、役割のひとつです。
トオツヤマサキタラシを祀る神社
この神を主祭神とするのは、愛知県犬山市羽黒成海郷の鳴海杻神社です。
島根県雲南市大東町の山岬神社は、神名の一部をそのまま社名にしています。
京都府長岡京市東神足の神足神社にも祀られます。長岡天満宮の兼務社で、神足という地名は名の「タラシ」と響き合います。
トオツヤマサキタラシが現代に残した痕跡
トオツヤマサキタラシの名は、社名と地名に残りました。
十七世神: ヤシマジヌミからこの神までの十五柱の総称。
山岬神社: 島根県雲南市の社。神名の一部を社名にする。
神足: 京都府長岡京市の地名。神足神社が鎮座する。
トオツヤマサキタラシのご利益
五穀豊穣
名の「満ち足りていること」による。
所願成就
充足を表す名であることによる。
トオツヤマサキタラシについてよくある質問
トオツヤマサキタラシとはどんな神様ですか。
古事記にのみ登場する神で、十七世神の最後の神です。初代ヤシマジヌミの十四世孫にあたります。
名前の意味は何ですか。
「遠方の山の崎が満ち足りていること」と解されます。「遠津」は母方の遠津待根神から承けたものです。
なぜここで系譜が終わるのですか。
はっきりしていません。代替わりを重ねて神から人に近づいたためとする指摘や、そこまでしか伝わらなかったとする見方があります。