葦が高く伸びるさまを名にした女神。別名を八河江比売という。
アシナダカとは何の神様か
アシナダカはひとことで言えば葦の丈を名にした女神です。古事記の大国主の系譜に、クニオシトミの妻として登場します。
別名を八河江比売(ヤガワエヒメ)といいます。
葦は邪気を払う力を持つとされました。それが高く茂ることは、国が栄えることの象徴になります。
アシナダカの漢字表記と読み方
読みは「あしなだか」です。「アシ」は葦、「ナ」は「の」を表す上代語の格助詞、「ダカ」は高を指します。
葦の丈が高いことが、そのまま名になっています。
別名の八河江比売は、「多くの川の江の巫女」と解されます。
神や命といった神号が付かないのは、巫女としての性格を表すためだとされます。日本神話には、この形の女神名がいくつも見られます。
葦那陀迦神(あしなだかのかみ)
古事記での表記。
八河江比売(やがわえひめ)
古事記に併記される別名。
アシナダカの物語
葦という植物
日本神話で、葦は特別な位置を占めます。
国の名そのものが葦原中国?。
最初に現れた神の名はウマシアシカビヒコヂ。葦の芽が萌え上がる形。
つまり日本は、はじめから葦の生える国として語られています。
葦は水辺に生え、群れて高く伸びます。刈って屋根を葺き、簾を編みました。
さらに、邪気を払う力があるとも考えられました。この女神の名が「葦の丈が高い」であることは、国土の繁栄をそのまま言い表しています。
二つの名を持つ
古事記は、この女神に二つの名を与えます。
葦那陀迦神 ─ 葦の丈が高いこと。植物の名。
八河江比売 ─ 多くの川の江の巫女。水辺の名。
どちらも水辺を指しています。
葦が茂るのは川の江、つまり入り江や河口です。二つの名は、同じ場所を植物の側と水の側から呼んだものと読めます。
比売の名が付くほうには神号がありません。これは巫女性を示す形式で、人と神のあいだにいる存在であることを表します。
大国主の孫の妻
この女神の位置は、系譜のなかではっきりしています。
オオクニヌシ → トリナルミ → クニオシトミ(夫)。
生んだ子は速甕之多気佐波夜遅奴美神。
オオクニヌシの孫の妻、ということになります。
古事記の大国主の系譜は、この先も長く続きます。名だけが並ぶ部分ですが、そのなかで夫婦の名がきれいに対応している箇所がいくつかあり、ここもそのひとつです。
夫の名は「国土が威圧的に豊富になること」、妻の名は「葦が高く茂ること」。どちらも豊かさを表しています。
祀る社と、その意味づけ
この女神を祀る社は、水辺に散っています。
浅井神社 ─ 富山県高岡市福岡町赤丸。主祭神。
矢合神社 ─ 滋賀県長浜市中野町。主祭神。
矢川神社 ─ 滋賀県甲賀市甲南町森尻。配祀。
矢川神社では諸芸上達・諸願成就の神とされます。
矢合神社では、葦が生えやすい水辺を司る神とされています。
岡山県倉敷市の足高神社は、かつて祭神の一説とされましたが、現在は祀られていません。名の似た社に後から当てはめられ、また外された例です。
アシナダカの家系図と家族
アシナダカの性格と人物像
アシナダカは、風景そのものの神です。
事績はありません。何も語りません。あるのは、水辺に葦が高く茂っているという一枚の景色だけです。
しかし日本神話にとって、その景色は特別なものでした。
葦原中国という国名が示すとおり、葦の茂る土地こそがこの国の姿でした。豊かさをひとことで表すなら葦の高さだった時代の感覚が、この女神の名に閉じ込められています。
アシナダカを祀る神社
この女神を主祭神とする社は、富山県高岡市の浅井神社と、滋賀県長浜市の矢合神社が知られます。
いずれも川と入り江のある土地です。
滋賀県甲賀市の矢川神社には配祀されます。岡山県倉敷市の足高神社は名が似ることから祭神の一説とされたことがありますが、現在は祀られていません。
アシナダカが現代に残した痕跡
アシナダカの名は、葦の景色に残りました。
葦原中国: 日本の古い呼び名。葦の生える国という意味。
八河江: 多くの川の入り江。この女神の別名。
十七世神: この女神の夫クニオシトミが属する系譜。
アシナダカのご利益
五穀豊穣
葦が高く茂ることが繁栄を表すことによる。
厄除け
葦に邪気を払う力があるとされたことによる。
諸芸上達
矢川神社での祈願による。
アシナダカについてよくある質問
アシナダカとはどんな神様ですか。
古事記の大国主の系譜に、クニオシトミの妻として登場する女神です。別名を八河江比売といいます。
名前の意味は何ですか。
「葦の丈が高いこと」です。葦は邪気を払う力を持つとされ、それが高く茂ることは国の繁栄を象徴しました。
なぜ神号が付かないのですか。
別名の八河江比売に「神」や「命」が付かないのは、巫女としての性格を表すためだと説かれます。
アシナダカと併せて覚えたい言葉・用語
葦原中国(あしはらのなかつくに)
高天原と黄泉の国の間にある地上の世界。のちの日本の国土にあたる。