葦の芽が神になったもの。生命が芽吹く力を表す。
ウマシアシカビヒコヂとは何の神様か
ウマシアシカビヒコヂはひとことで言えば最初の生命です。別天津神?の四番目にあたり、造化三神のあとに現れました。
国土がまだ水に浮く脂のようで、くらげのように漂っていたとき、葦の芽のように萌え上がるものによって成った神です。
世界で最初に現れた「生きているもの」が、この神です。
ウマシアシカビヒコヂの漢字表記と読み方
読みは「うましあしかびひこぢ」です。日本神話でもっとも長い神名のひとつです。
分解すると、意味がはっきりします。
ウマシ ─ 美(うま)し。すぐれている。
アシカビ ─ 葦(あし)の芽(かび)。
ヒコヂ ─ 男を表す語。
「カビ」は黴(かび)ではなく、芽を指す古語です。
つまりすぐれた葦の芽の男神。名がそのまま姿を説明しています。
宇摩志阿斯訶備比古遅神(うましあしかびひこぢのかみ)
古事記での表記。
可美葦牙彦舅尊(うましあしかびひこぢのみこと)
日本書紀での表記。
ウマシアシカビヒコヂの物語
くらげのように漂う国
古事記は、この神が生まれた状況をこう記します。
国稚く浮きし脂の如くして、久羅下那洲多陀用弊流之時。
国は若く、水に浮いた脂のようで、くらげのように漂っていたという意味です。
まだ形がありません。
天と地は分かれましたが、地上は固まっていませんでした。
そこへ、
葦牙の如く萌え騰る物に因りて成りませる神。
葦の芽のように萌え上がるものによって、この神が成りました。
なぜ葦なのか
葦(あし)は、水辺に生える草です。
泥の中から、まっすぐに芽を出す。
群れて茂り、あっという間に伸びる。
何もない泥沼から、最初に立ち上がるもの。それが葦です。
日本の国土そのものを葦原中国?(あしはらのなかつくに)と呼びます。葦の原という意味です。
豊葦原の瑞穂の国という美称もあります。
葦は、日本の国土を表す植物でした。その芽が最初の生命になるのは、筋が通っています。
別天津神という五柱
古事記は、最初に現れた五柱を別天津神(ことあまつかみ)として、特別に扱います。
1. 天之御中主神 ─ 天の中心
2. 高御産巣日神 ─ 生み出す力
3. 神産巣日神 ─ 生み出す力
4. 宇摩志阿斯訶備比古遅神 ─ 芽吹く力
5. 天之常立神 ─ 天が永遠に立つ
五柱とも独神で、生まれてすぐ姿を隠しました。
1・2・3は天の秩序、5は天の持続を表します。
この神だけが、生命を表しています。
抽象のなかの、ただ一つの具体
別天津神の名を並べると、この神の異質さが際立ちます。
中心。生成の力。生成の力。葦の芽。永遠に立つ。
四柱が概念であるのに対し、この神だけが実在する植物の名を持っています。
天の中心を見た人はいません。しかし、葦の芽は誰でも見たことがあります。
水辺の泥から、とがった芽が突き出る。それが世界の始まりに置かれました。
もっとも身近なものが、もっとも根源的なものとして扱われたわけです。
ウマシアシカビヒコヂの家系図と家族
ウマシアシカビヒコヂの性格と人物像
ウマシアシカビヒコヂは、始まりの勢いそのものです。
物語も台詞もなく、生まれてすぐ姿を隠しました。しかし、この神が現れた瞬間に世界に生命が入りました。
それまでは、漂う脂とくらげだけでした。
以後、神々は次々に生まれ、国が生まれ、人が生まれます。その起点にいる神です。
名に「ウマシ(すぐれている)」が付いていることが、この神への評価を表しています。芽吹くことは、それだけで良いこととされました。
ウマシアシカビヒコヂを祀る神社
ウマシアシカビヒコヂを主祭神とする社は多くありません。
別天津神五柱をまとめて祀る形で、名が挙がる例が中心です。
造化三神を祀る社に、あわせて祀られることがあります。中世以降の神道思想の影響を受けた社に多く見られます。
東京大神宮など、造化三神を祀る社が知られます。
ウマシアシカビヒコヂが現代に残した痕跡
ウマシアシカビヒコヂの名は、国土の呼び名に残りました。
葦原中国: 日本の国土を指す語。「葦の原」という意味。
豊葦原の瑞穂の国: 日本の美称。葦が茂り、稲が実る国という意味。
カビ(芽): 黴ではなく芽を指す古語。「アシカビ」は葦の芽。
ウマシアシカビヒコヂのご利益
開運
芽吹く力を表す神であることによる。
子孫繁栄
生命の始まりに関わることによる。
五穀豊穣
植物が萌え上がる力によることによる。
ウマシアシカビヒコヂについてよくある質問
ウマシアシカビヒコヂとはどんな神様ですか。
別天津神の四番目で、葦の芽が萌え上がる力から成った神です。世界で最初に現れた生きているものにあたります。
なぜ葦なのですか。
葦は泥の中からまっすぐ芽を出し、群れて茂ります。日本の国土そのものを「葦原中国」と呼ぶほど、国土を表す植物でした。
別天津神とは何ですか。
古事記が最初に現れた五柱を特別に扱った呼び方です。五柱とも独神で、生まれてすぐ姿を隠しました。
ウマシアシカビヒコヂと併せて覚えたい言葉・用語
天津神(あまつかみ)
高天原に生まれた、あるいは高天原から降りてきた神々。
葦原中国(あしはらのなかつくに)
高天原と黄泉の国の間にある地上の世界。のちの日本の国土にあたる。