スサノオの娘でオオクニヌシの正妻。夫の試練を助けた。
スセリビメとは何の神様か
スセリビメの漢字表記と読み方
読みは「すせりびめ」です。「スセリ」は進む・すさぶを表すとする説があります。
父スサノオの「スサ」と同じ語根とされ、荒々しく進むという性格を親子で共有していることになります。嫉妬の激しさも、この名と通じます。
須勢理毘売命(すせりびめのみこと)
古事記での表記。
スセリビメの物語
根の国で出会う
八十神に二度殺されたオオクニヌシは、木の国を経て根の国へ逃れました。
そこでスセリビメと出会い、目を見交わして結ばれます。
目合ひして、相婚ひたまひき。
姫は父に「とても麗しい神が来た」と告げました。ところがスサノオは一目見て、「これは葦原色許男(あしはらしこお)だ」と名付けます。醜い男、という意味を含む呼び名です。
三つの試練
スサノオは娘の夫を認めず、試練を課しました。
蛇の室に寝かせる。
百足と蜂の室に寝かせる。
野に矢を射込み、火を放つ。
スセリビメは、そのたびに比礼(ひれ)という布を渡しました。「蛇が来たら三度振れ」と教え、そのとおりにすると蛇は静まります。
野火のときは、ネズミが穴を教えて助けました。姫は夫が死んだと思い、葬具を持って泣いていたと記されます。
父の髪を柱に結んで逃げる
スサノオが眠ったすきに、オオクニヌシは父の髪を室の垂木に結びつけ、大岩で戸を塞ぎました。
スセリビメを背負い、生大刀・生弓矢・天の詔琴を持って逃げます。琴が木に触れて鳴り、スサノオは目を覚ましました。
追いかけて黄泉比良坂まで来たスサノオは、遠くから叫びます。
その大刀と弓矢で兄弟を追い払い、大国主となれ。我が娘を正妻とせよ。
試練は、認めるための儀式でした。
嫉妬と、和解の歌
のちにオオクニヌシが越の国のヌナカワヒメに通うと、スセリビメは激しく嫉妬しました。
夫は出て行こうとして歌を詠み、姫は盃を捧げて歌を返します。
汝こそは 男にいませば…吾はもよ 女にしあれば 汝を除きて 男は無し
(あなたは男だから多くの女がいるでしょう。でも私は女だから、あなた以外に男はいません)
二柱は盃を交わして和解しました。記紀でもっとも人間味のある夫婦の場面とされます。
スセリビメの母は誰か
古事記はスセリビメをスサノオの娘と記しますが、母の名を示しません。スサノオの妻クシナダヒメを母とする系図が紹介されることはありますが、本文から確定できません。
検索への答えは、父はスサノオ、母は不詳です。物語上の家族関係と、後世に補われた系図を分けます。
比礼はどのように夫を助けたか
スセリビメは蛇の室とムカデ・蜂の室へ入れられるオオクニヌシに、呪力を持つ比礼を渡し、振り方を教えます。野火の場面を直接救うのは鼠ですが、姫は葬具を持って嘆きました。
すべての試練を一人で解決したのではなく、比礼・鼠・本人の機転がそれぞれ働きます。
別名と出雲国風土記の伝承
古事記の表記は須勢理毘売命、出雲国風土記には和加須世理比売命の名が見えます。出雲大社では須勢理比売命と表記します。
須世理姫などの異表記も同じ女神を指す場合がありますが、由良比女命など別の地域神との同一視は、伝承ごとに根拠を確認します。
スセリビメの家系図と家族
スセリビメの性格と人物像
古事記が描くスセリビメは、根の国の試練でオオクニヌシを助け、のちに嫡后として夫と歌を交わす女神です。
嫉妬や強さを現代的な性格診断にするより、呪力を持つ比礼で危機を退ける働きと、神語の歌による夫婦関係に注目します。母の名は古事記に記されず、クシナダヒメの娘と確定することもできません。
スセリビメを祀る神社
出雲大社公式の摂末社案内では、本殿近くの御向社に須勢理比売命を祀ります。父スサノオを祀る素鵞社とは別の摂社です。
八重垣神社の主祭神は素盞嗚尊・稲田姫命で、須勢理比売命の代表社ではありません。「スサノオの娘」という関係だけで祭神カー?ドにしないため、従来の掲載を差し替えました。
スセリビメが現代に残した痕跡
スセリビメの名は、歌に残りました。
神語(かむがたり): オオクニヌシとスセリビメが交わした歌。古事記に収められている。
比礼(ひれ): 肩に掛ける細長い布。振ることで災いを払うとされた。
スセリビメのご利益
縁結び
オオクニヌシの正妻であることによる。
夫婦円満
嫉妬ののち歌を交わして和解した話による。
厄除け
比礼を渡して夫を試練から救ったことによる。
スセリビメについてよくある質問
スセリビメとは誰ですか。
スサノオの娘で、オオクニヌシの正妻です。父が課した三つの試練から夫を助け、ともに根の国を脱出しました。
なぜ嫉妬の話が有名なのですか。
記紀で、夫婦が歌を交わして和解する場面が詳しく記されているためです。神話の中でもっとも人間味のある場面とされます。
オオクニヌシの正妻なのですか。
古事記はこの女神を嫡后(正妻)と記します。ヤガミヒメら他の妻がいるなかで、正妻の位置にあるとはっきり書かれています。
スセリビメの母はクシナダヒメですか。
古事記は母の名を記しません。クシナダヒメを母とする系図はありますが、古事記本文からは父がスサノオであることまでが確実です。
スセリビメを祀る神社はどこですか。
出雲大社境内の御向社に須勢理比売命が祀られています。八重垣神社の主祭神は別の女神・稲田姫命です。
スセリビメと併せて覚えたい言葉・用語
根の国(ねのくに)
地の底にあるとされる国。スサノオが最終的に治める。黄泉の国と同一視されることもある。
カー(kꜣ/生命力)
人と一緒に生まれ、死後も供物を受け取る生命力。クヌムがろくろで人を作るとき、肉体とカーの二体を同時に形作った。