スサノオの子。木の種を持って国土を緑にしたと伝わる木の神。
五十猛神とは何の神様か
五十猛神はひとことで言えば木の神です。
スサノオの子で、日本書紀によれば、父とともに新羅へ渡ったのち日本へ帰り、持ってきた木の種を国じゅうに播いたとされます。
大八洲の内に、青山ならざるはなし。
日本の山が緑に覆われているのはこの神のはたらきによる、と書紀は記します。林業と建築の守り神です。
五十猛神の漢字表記と読み方
読みは「いそたける」です。「イソ」は五十の字を当てますが、数ではなく多いことを表す語とされます。
和歌山の伊太祁曽(いたきそ)神社の名は、この神の別名「射楯(いたて)」との関わりが指摘されます。紀伊国は「木の国」とも書かれ、木の神を祀る土地であったことが国名に残っています。
五十猛神(いそたけるのかみ)
日本書紀での表記。
大屋毘古神(おおやびこのかみ)
古事記に見える神と同一とする説がある。
射楯神(いたてのかみ)
播磨で用いられる表記。
五十猛神の物語
父とともに新羅へ渡る
日本書紀の一書?によれば、高天原?を追われたスサノオは、子の五十猛神を連れて新羅へ降りました。
しかしその地を良しとしなかったため、土の船を作って東へ渡り、出雲に着いたと記されます。
このとき五十猛神は、多くの木の種を持っていました。
木の種を国じゅうに播く
五十猛神は、持ってきた木の種を新羅には播かず、日本の国じゅうに播いたと書紀は記します。
ことごとくに播き生して、大八洲の内に、青山ならざるはなし。
日本の山に緑がないところはなくなった、という記述です。国土の緑そのものを作った神として位置づけられています。
この功により有功之神(いさおしのかみ)と称えられたと記されます。
木の国に祀られる
五十猛神は、妹の大屋津姫命・抓津姫命とともに紀伊国に鎮まったとされます。
紀伊は「木の国」とも書かれる土地です。木材の産地として知られ、その国名と木の神が結びついています。
和歌山の伊太祁曽神社が中心の社で、林業・建築の関係者から崇敬を受けてきました。木は船にもなるため、航海の守りともされます。
五十猛神と大屋毘古神は同じ神か
日本書紀の五十猛神と、古事記でオオクニヌシを木の国へ逃がす大屋毘古神は、同一視されることがあります。先代旧事本紀に大屋彦神を五十猛の別名とする記述があり、どちらも紀伊・樹木に関わるためです。
ただし古事記本文が「五十猛の別名は大屋毘古」と明記するわけではありません。資料ごとの神名を残し、同一とする有力説として扱います。
新羅から木の種を持ち帰ったのか
日本書紀の一書では、スサノオが五十猛を伴って新羅の曽尸茂梨へ降り、のちに埴土の舟で出雲へ渡ります。五十猛は多くの樹木の種を持っていましたが新羅には植えず、大八洲国へ播いたとされます。
これは日本書紀の一書の神話で、古事記には新羅渡航も全国植樹もありません。どの古典の伝承かを明示します。
五十猛神社と伊太祁曽神社の違い
検索では各地の五十猛神社が出ます。神名をそのまま社名にした地域社と、紀伊国一宮の伊太祁曽神社は別の神社です。住所や由緒を取り違えないよう、参拝先は都道府県まで確認します。
読みも神名はいそたける、伊太祁曽神社はいたきそです。
五十猛神の家系図と家族
五十猛神の性格と人物像
五十猛神は、作った神です。
多くの神が生まれる・戦う・治めるという物語を持つのに対し、この神の事績は種を播いたことに尽きます。それも新羅ではなく日本にだけ播いた、と書紀はわざわざ記します。
国土の姿を変えた神でありながら、その働きは静かです。山を見れば、その仕事が見えるという形で残りました。
五十猛神を祀る神社
五十猛命を主祭神とする代表社は、和歌山市の伊太祁曽神社です。和歌山県・和歌山市の資料も、木種を播いた木の神として案内しています。
宇佐神宮の主祭神は八幡大神などで、摂社伝承だけでは五十猛神の代表社になりません。祭神を公式資料で確認できないカー?ドは外しました。
五十猛神が現代に残した痕跡
五十猛神の名は、国名と地名に残りました。
紀伊国(木の国): 和歌山の古い国名。木材の産地であり、木の神を祀る土地であったことによるとされる。
伊太祈曽という地名: 和歌山市の地名。伊太祁曽神社の鎮座地。
五十猛神のご利益
林業・木材
木の種を播いた神であることによる。
建築・造船
木を使う仕事全般の守りとされる。
航海安全
船が木で作られることによる。
厄除け
大屋毘古神として、オオクニヌシを危難から救った話による。
五十猛神についてよくある質問
五十猛神とはどんな神様ですか。
スサノオの子で、木の神です。日本書紀によれば、木の種を国じゅうに播き、日本の山を緑にしたとされます。
五十猛神の読み方は。
「いそたけるのかみ」です。「五十」は数ではなく、多いことを表す語とされます。
五十猛神を祀る神社はどこですか。
和歌山市の伊太祁曽神社が中心で、紀伊国一宮です。林業・建築の関係者から崇敬を受けています。
大屋毘古神と同じ神ですか。
同一とする説があります。古事記の大屋毘古神は、オオクニヌシを危難から救った神として登場します。
五十猛神は古事記にも登場しますか。
五十猛という名と全国植樹の話は日本書紀の一書です。古事記の大屋毘古神を同一とする説がありますが、本文上の表記は異なります。
五十猛神と伊太祁曽神社は読みが違うのですか。
神名は一般に「いそたける」、神社名は「いたきそ」と読みます。伊太祁曽神社は五十猛命を主祭神とする紀伊国一宮です。
五十猛神と併せて覚えたい言葉・用語
高天原(たかまがはら)
天上にある神々の国。アマテラスが治める。
一書(あるふみ)
日本書紀が本文とは別に併記する異伝。「一書に曰く」の形で複数載る。
カー(kꜣ/生命力)
人と一緒に生まれ、死後も供物を受け取る生命力。クヌムがろくろで人を作るとき、肉体とカーの二体を同時に形作った。