本文へ移動

日本神話

乙子狭姫(おとごさひめ)とは何の神様か|家系図・物語・祀る神社

乙子狭姫  / オトゴサヒメ

大地 国津神

赤雁に乗って五穀の種を運んだ女神。石見に伝わるオオゲツヒメの末娘。

オトゴサヒメとは何の神様か

オトゴサヒメはひとことで言えば種を運んだ小さな姫です。島根県石見地方に伝わる女神で、単に狭姫とも呼ばれます。

母は、古事記に登場するオオゲツヒメです。

母が斬られて死ぬとき、その遺体から五穀の種が芽生えました。末っ子のこの女神が種を手に、赤雁の背に乗って海を渡ります。

オトゴサヒメの漢字表記と読み方

読みは「おとごさひめ」です。「オトゴ」は乙子、つまり末っ子を指します。

「サ」は小さいという意味で、ちび姫という愛称でも呼ばれます。

「サヒメ」という名の初出は、出雲国風土記の国引き神話です。

三瓶山の旧名が佐比売山でした。この山の名と、石見の伝説の姫の名が結びついています。

乙子狭姫(おとごさひめ)

石見地方での表記。

狭姫(さひめ)

短く呼ぶ形。

種姫(たねひめ)

種を伝えたことから人々が呼んだ名。

オトゴサヒメの物語

  1. 母の死体から種が生える
  2. 二度断られる
  3. 巨人を三瓶山へ送る
  4. 石見を西から東へ

母の死体から種が生える

話の始まりは、古事記のオオゲツヒメの物語と重なります。

心のよくない神が、体のどこからでも食物を出すオオゲツヒメを面白半分に斬ってしまいました。

お前は末っ子で体も小さい。形見をやるから安国へ行って暮らすがよい。

そう言って母は息を引き取ります。

すると、その遺体から見る見るうちに五穀の種が芽生えました。

狭姫は種を手にすると、そこへ来た赤雁の背に乗って旅立ちます。死体から作物が生まれる型の神話は、ハイヌウェレ型と呼ばれます。

二度断られる

海を渡った赤雁は疲れ、休む場所を探します。しかし、簡単には受け入れられません。

高島(現在の益田市) ─ オオヤマツミの使いの鷹が出てきた。
我は肉を喰らう故、五穀の種なぞいらん。
須津の大島(現在の浜田市三隅町) ─ 鷲が出てきて、同じように追い払った。

力を振り絞った狭姫と赤雁は、鎌手大浜の亀島でようやく一休みし、赤雁の天道山に降り立ちました。

比礼振山まで進んだところで、周囲に種の里を開きます。

断った高島でいまも穀物が獲れない理由を説明する、由来譚にもなっています。

巨人を三瓶山へ送る

後半は、まったく調子の違う話になります。

狭姫は巨人の足跡に出くわします。大山祇巨人のものだといいます。

山の穴からいびきが聞こえたので声をかけると、返ってきたのはオカミでした。

我は頭が人で体が蛇だから、神も人も驚いて気を失うだろう。それより我が兄の足長土に会い給え。

狭姫は、三瓶山の麓を切り開いて巨人たちを遊ばせることを思いつきます。

帰り道で出会った手長土に、足長土を娶わせました。手の長い者と足の長い者が力を合わせ、幸せに暮らしたといいます。

石見を西から東へ

この話は、地図の上をまっすぐ動きます

石西(石見の西部、益田) → 石央(中部、浜田) → 石東(東部、大田の三瓶山)。

島根県石見地方を、西から東へ開いていく話になっています。

前半は穀物の起源譚で、悲しい調子です。後半は巨人譚で、明るい調子です。二つの性質の違う話が、一続きになっています。

文献ではっきりたどれるのは近代までで、江戸時代の石見八重葎にはこの伝説が載っていません。近代に形が整えられた可能性が指摘されています。

オトゴサヒメの家系図と家族

オトゴサヒメの親: オオゲツヒメ

オトゴサヒメのきょうだい: 五十猛神ともに種を運ぶ神ムナスキヒメともに石見に流れ着く女神アメノトヨタラシカラヒメともに石見を開く女神

オトゴサヒメの性格と人物像

オトゴサヒメは、小さいことを引き受けた神です。

末っ子で、体も小さい。だからこそ母は種を託しました。追い払われても引き返さず、断られた場所を恨みもしません。

巨人に会っても、倒すのではなく居場所を作ってやります

手長土と足長土を娶わせ、三瓶山の麓で暮らさせる。排除ではなく配置で解決するという結末は、日本神話のなかでも特徴的です。石見の人々が、自分たちの土地の成り立ちをどう語りたかったかが表れています。

オトゴサヒメを祀る神社

この女神にゆかりの社は、島根県益田市の佐毘売山神社です。乙子町に鎮座します。

佐毘売は、三瓶山の旧名佐比売山と同じ音です。

益田市赤雁町には天道山赤雁土居跡が残り、話に出てくる地名が実際の土地として残っています。大田市の三瓶山も、話の終着点です。

伊太祁曽神社(いたきそじんじゃ)

紀伊国

地図で開く

伊太祁曽神社の住所: 和歌山県和歌山市伊太祈曽558

伊太祁曽神社の御祭神: 五十猛命

伊太祁曽神社のご利益: 産業繁栄

この女神を祀る社ではない。同じく種を運んだとされる神を祀る社として並べた。

周辺の宿をさがす

伊太祁曽神社へ参拝するときの、和歌山県和歌山市の宿を探せます。

広告を含みます

オトゴサヒメが現代に残した痕跡

オトゴサヒメの名は、石見の地名に残りました

三瓶山: 島根県大田市の山。旧名を佐比売山という。話の終着点。

赤雁: 島根県益田市の地名。この女神を乗せた鳥の名。

ハイヌウェレ型神話: 殺された神の死体から作物が生まれる型。この話もこれにあたる。

手長足長: 手の長い者と足の長い者。この女神が娶わせたとされる。

オトゴサヒメのご利益

五穀豊穣

五穀の種を運んだことによる。

開拓

石見を西から東へ開いた伝えによる。

縁結び

手長土と足長土を娶わせたことによる。

オトゴサヒメについてよくある質問

オトゴサヒメとはどんな神様ですか。

島根県石見地方に伝わる女神です。母オオゲツヒメの遺体から生えた五穀の種を持ち、赤雁に乗って石見へ渡り、種の里を開いたと伝えられます。

記紀に出てきますか。

記紀に名はありません。母オオゲツヒメは古事記に登場しますが、この女神は石見地方の伝説にのみ伝わります。

サヒメという名はどこから来ていますか。

出雲国風土記の国引き神話に見える三瓶山の旧名、佐比売山が初出です。山の名と伝説の姫の名が結びついています。