谷の水を司る神。クラオカミと対をなす。
クラミツハとは何の神様か
クラミツハの漢字表記と読み方
読みは「くらみつは」です。「クラ」は谷を指す古語で、「くらがり」の「くら」と同じく、日の当たらない深い場所を意味します。
「ミツハ」は「水(み)つ早(は)」、つまり水の流れの速さとする説があります。
ミズハノメの「ミヅハ」と同じ語で、水そのものを表します。
「ミ」は水、「ツ」は〜の、「ハ」は走る・這うという読み方です。
闇御津羽神(くらみつはのかみ)
古事記での表記。
闇罔象神(くらみつはのかみ)
日本書紀での表記。
闇淤加美神(くらおかみのかみ)
対になる神。同じ場面で生まれる。
クラミツハの物語
剣の柄から生まれる
イザナギがカグツチを斬ったとき、血は剣の各部から飛び散り、それぞれ神を生みました。
剣の先 → 岩の神三柱
剣の根本 → ミカハヤヒ・ヒハヤヒ・タケミカヅチ
剣の柄 → クラオカミ・クラミツハ
火の神を斬った剣から、水の神が生まれています。
剣の柄は、握る場所です。刃から最も遠い部分から水の神が生まれるという構成は、焼けた刃を水に入れる焼き入れを思わせるとされます。
龍と、流れ
同じ場所から生まれた二柱には、性格の違いがあります。
クラオカミ ─ 「オカミ(龍)」。雨を呼ぶ。
クラミツハ ─ 「ミツハ(水の走り)」。流れそのもの。
前者は降らせる神、後者は流れる神です。
雨が降り、谷を流れ、田に至る。その過程が二柱に分けられています。
水の神が細かく分けられているのは、農耕にとって水の管理が生死に関わったためです。
三つのクラ
「クラ」を名に持つ水の神は、三柱います。
闇淤加美神(クラオカミ)
闇御津羽神(クラミツハ)
闇山津見神(クラヤマツミ) ─ カグツチの体から生まれた山の神
いずれも「谷」を意味する「クラ」を含みます。
山の谷、谷を流れる水、その水を呼ぶ龍。谷という一つの地形が、三柱に分けて神格化されたことになります。
日本の神が、地形に細かく結びついていることを示す例です。
水を分ける争い
農耕の社会では、水の配分が最大の争いの種でした。
上流が引けば、下流に来ない。
水争い(みずあらそい)は、村同士の血を見る争いに発展することもありました。
そのため、水の分配には厳格な決まりが設けられました。井堰(いせき)の管理、順番、時間。
水利をめぐる取り決めは、村の掟の中心でした。水の神が細かく分かれているのは、この現実を反映しているとみられます。
クラミツハの家系図と家族
クラミツハの性格と人物像
クラミツハは、分業のなかの一柱です。
単独で語られることはほとんどありません。クラオカミと対で、あるいはミズハノメと重ねて理解されます。
日本の水の神が、これほど細かく分かれているのは偶然ではありません。
雨、谷の水、田の水、井戸の水。それぞれが別の管理を必要としました。
神の数が多いということは、それだけ細かく現実を見ていたということでもあります。
クラミツハを祀る神社
クラミツハを単独で祀る社は多くありません。
水の神をまとめて祀る形や、ミズハノメと同一視して祀られる例が中心です。
丹生川上神社の三社は、いずれも水の神を祀り、祈雨・止雨を担ってきました。奈良の吉野一帯は、水の神への信仰が特に濃い土地です。
丹生川上神社(中社)(にうかわかみじんじゃ)
二十二社
祈雨・止雨を祈る社。ミヅハの名を持つ神を祀る。
上社・下社とあわせて三社ある。
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クラミツハが現代に残した痕跡
クラミツハの名は、水の言葉に残りました。
くら(谷): 日の当たらない深い場所を指す古語。「くらがり」と同じ語。
ミヅハ: 水の流れを表す語。ミズハノメの名にも含まれる。
水争い: 田の水をめぐる村同士の争い。水利の取り決めは村の掟の中心だった。
クラミツハのご利益
祈雨・止雨
水を司る神であることによる。
五穀豊穣
田の水を司ることによる。
水難除け
水の流れを司ることによる。
クラミツハについてよくある質問
クラミツハとはどんな神様ですか。
カグツチを斬った剣の柄に集まった血から生まれた水の神です。「クラ」は谷、「ミツハ」は水の流れを指します。
クラオカミとは違うのですか。
同じ場面で生まれた対の神です。クラオカミが龍として雨を呼ぶのに対し、クラミツハは水の流れそのものを表します。
なぜ水の神がこれほど多いのですか。
農耕において水の配分が生死に関わったためです。雨、谷の水、田の水がそれぞれ別の管理を必要とし、神も細かく分かれました。