陰陽道の方位神。村の境や辻に石碑として祀られる。
オウバンシンとは何の神様か
オウバンシンはひとことで言えば石碑になった星の神です。九曜の一つである羅睺(らごう)を祀ったものです。
集落の境や村の中心、道の辻や三叉路などに、主に石碑の形で祀られています。
もとはインド神話のラーフというアスラであり、日食を引き起こす神として恐れられました。
オウバンシンの漢字表記と読み方
読みは「おうばんしん」です。「オウバン(黄幡)」は黄色い幡を指します。
幡は、旗のことです。
羅睺(らごう)は、九曜という九つの星の一つです。
日食や月食を起こすとされ、実体のない影の星とされました。インドのラーフが、中国を経て日本に伝わったものです。
黄幡神(おうばんしん)
一般に用いられる表記。
黄幡神(おうばんじん)
別の読み方。
羅睺(らごう)
九曜の一つ。この神のもとになった星。
オウバンシンの物語
日食を起こす星
この神のもとは、インド神話にあります。
ラーフ ─ アスラの一人。
神々が不死の霊薬を分けたとき、ラーフは変装して盗み飲みました。太陽と月がそれを見つけて告げ口したため、首を斬られます。
しかし霊薬を飲んでいたため、首だけが不死になりました。
恨みから、ラーフの首は太陽と月を追いかけて呑み込みます。それが日食と月食だと説明されました。
日本に伝わると、日食を起こす神であるスサノオと習合します。天岩戸で太陽が隠れる話と重なったためです。
八将神の一柱
陰陽道では、この神は方位を司ります。
八将神 ─ 吉凶の方位を司る八柱。
この神はその一柱で、別名を万物の墓の方、また兵乱の神ともいいます。
この方角へ向かって土を動かすのは凶とされます。
しかし、武芸に関することは吉です。
家を建てる、井戸を掘る、木を植える。すべて方角を選ばなければなりませんでした。暦のなかで、この神は避けるべき方角を示していました。
石碑の型
この神は、石碑の形で残っています。道祖神とよく似ていますが、見分ける手がかりがあります。
文字黄幡神 ─ 羅睺に関する漢字や梵語が刻まれる。
蛇頭黄幡神 ─ 憤怒の表情で、頭に九頭の蛇が刻まれる。ラーフを表す。
日月黄幡神 ─ 左右または上下に、太陽と月を表す文字や絵が刻まれる。
日食黄幡神 ─ 日食や月食を表す黒円が刻まれる。
蛇形黄幡神 ─ 姿が完全に蛇になっている。
九頭の蛇は、ラーフの姿を表します。
日月が刻まれるのは、習合したスサノオの性質を継承したものといわれます。
境に立つ
この神が置かれる場所には、決まりがあります。
集落の境。村の中心。村内と村外の境界。道の辻。三叉路。
いずれも境目です。
道祖神や塞の神、チマタノカミと、置かれる場所が重なります。
もとは災害をもたらす恐ろしい神でしたが、いまは村の守り神として信仰されています。
外から来る災いを、災いの神で防ぐ。恐ろしいものを境に置いて、より恐ろしいものを退ける。日本各地の境の神に共通する考え方です。
オウバンシンの家系図と家族
オウバンシンの性格と人物像
オウバンシンは、遠くから来た神です。
インドのアスラが、中国の星の神になり、日本で陰陽道の方位神になり、スサノオと習合し、最後は村の辻に立つ石碑になりました。
日食を起こす恐ろしい存在が、村を守る神に変わっています。
仏教での本地は摩利支天王とされます。神として分類されながら、密教と深く結びついた神です。信仰が国境を越えて変形していく過程を、そのまま体現しています。
オウバンシンゆかりの地と遺跡
この神は、社殿を持つ神社ではなく、石碑の形で祀られることがほとんどです。
集落の境、村の中心、道の辻や三叉路などに立ちます。
見た目は道祖神とよく似ていますが、羅睺に関する漢字や梵語、九頭の蛇、日月、日食を表す黒円などが刻まれていれば、この神と見分けられます。
オウバンシンが現代に残した痕跡
オウバンシンの名は、暦と石碑に残りました。
八将神: 陰陽道で吉凶の方位を司る八柱。この神もその一柱。
羅睺: 九曜の一つ。日食と月食を起こすとされた影の星。
ラーフ: インド神話のアスラ。この神のもとになった存在。
オウバンシンのご利益
厄除け
村の境に立って災いを防ぐことによる。
武運長久
武芸に関することは吉とされたことによる。
オウバンシンについてよくある質問
オウバンシンとはどんな神様ですか。
九曜の一つである羅睺を祀った神です。集落の境や道の辻に、主に石碑の形で祀られています。
もとはどこの神ですか。
インド神話に登場するラーフというアスラです。日食を引き起こす神として恐れられ、日本に伝わってからスサノオと習合しました。
道祖神とどう見分けますか。
羅睺に関する漢字や梵語、九頭の蛇、太陽と月、日食を表す黒円などが刻まれていれば、この神と見分けられます。