オオクニヌシとタキリビメの子。友の葬儀で怒り、喪屋を斬り倒した。
アヂスキタカヒコネとは何の神様か
アヂスキタカヒコネの漢字表記と読み方
読みは「あぢすきたかひこね」です。「スキ(鉏・耜)」は鋤、農具のことです。
「アヂ」は美しい・良いを表す古語とされます。「タカヒコネ」は高い日の子で、太陽の性格を示すとする説もあります。
名に農具が入る神は多くありません。農耕の神としての性格をはっきり示しています。
阿遅鉏高日子根神(あぢすきたかひこねのかみ)
古事記での表記。
味耜高彦根神(あぢすきたかひこねのかみ)
日本書紀での表記。
アヂスキタカヒコネの物語
友の葬儀で、間違えられる
アメノワカヒコが返し矢で死に、葬儀が行われました。
弔問に訪れたアヂスキタカヒコネの姿が、死んだ友とあまりによく似ていました。遺族は生き返ったと思い込み、泣きながら取りすがります。
我が子は死んでいなかった。我が君は生きていた。
喪屋を斬り倒す
アヂスキタカヒコネは激怒しました。
汝らは、我を穢れた死人と間違えるのか。
私は友であるから弔いに来たのだと言い、剣を抜いて喪屋を斬り倒し、足で蹴り飛ばして飛び去りました。
蹴り飛ばされた喪屋は、美濃の喪山になったと記されます。
死の穢れに触れることを、これほど強く拒む場面は記紀に多くありません。死者と間違えられることが、最大の侮辱であった時代の感覚が現れています。
妹が兄を讃える歌
飛び去った兄が誰であるかを人々に伝えるため、妹のシタテルヒメが歌を詠みました。
天なるや 弟棚機の 項がせる 玉の御統 御統に 穴玉はや み谷 二渡らす 阿治志貴高日子根の神ぞ
首飾りの玉のように輝きながら、二つの谷を越えていく神──という讃え歌です。
これが夷振(ひなぶり)という歌の起こりとされます。記紀の中で、歌が明確に残る場面のひとつです。
雷神とする説
この激しさから、雷神とする説があります。
剣で建物を斬り倒し、飛び去る。雷が落ちる情景と重なります。
奈良の高鴨神社を中心に祀られ、葛城の鴨氏が奉斎しました。鴨氏は雷神を祀る一族としても知られます。
名に鋤(農具)が入ることから農耕の神でもあり、雷と農耕が結びついています。雷が多い年は豊作という言い伝えとも通じます。
アメノワカヒコと同じ顔なのはなぜか
古事記は二神がよく似ていたため遺族が生き返ったと誤認したと記します。なぜ似ているかは説明しません。農耕祭儀の死と再生を表し、本来は同一神の変身前後だったとみる研究説もあります。
あくまで説であり、古事記の物語上は弔問に来た友と死者という別の神です。
雷神・農耕神という説明は確定か
神名の「スキ」を鋤と解して農耕神とする説、喪屋を斬り飛び去る激しさから雷神とする説があります。ほかにも水神・蛇神・剣神などの見解があり、どれか一つに確定していません。
ご利益や性格は、神名解釈ではなく高鴨神社の現在の信仰と分けて示します。
アヂスキタカヒコネの家系図と家族
アヂスキタカヒコネの性格と人物像
古事記が確実に描くのは、友の天若日子を弔いに来て、死者と取り違えられたことに怒り、喪屋を斬って飛び去った行動です。
雷神・農耕神・水神・剣神など神格の解釈には複数説があります。「怒る神」だけに縮めず、最高級の敬称迦毛之大御神を持つ葛城の重要神として位置づけます。
アヂスキタカヒコネを祀る神社
代表社は奈良県御所市の高鴨神社です。神社公式と國學院大學の資料は、阿遅志貴高日子根命を主祭神とし、古事記の別名「迦毛之大御神」と葛城の鴨信仰を説明しています。
美保神社の祭神は三穂津姫命と事代主神で、アヂスキタカヒコネ本人ではありません。父が同じという関係だけで掲載しません。
アヂスキタカヒコネが現代に残した痕跡
アヂスキタカヒコネの名は、地名と歌に残りました。
喪山(もやま): 蹴り飛ばされた喪屋が落ちた地とされる。岐阜県にある。
夷振(ひなぶり): シタテルヒメが兄を讃えた歌。歌の形式の起こりとされる。
アヂスキタカヒコネのご利益
五穀豊穣
名に鋤(農具)が入り、農耕の神とされることによる。
雷除け
雷神とする説による。
厄除け
穢れを強く拒む神であることによる。
アヂスキタカヒコネについてよくある質問
アヂスキタカヒコネとはどんな神様ですか。
オオクニヌシとタキリビメの子です。アメノワカヒコの葬儀で死者と間違えられ、激怒して喪屋を斬り倒したことで知られます。
なぜそれほど怒ったのですか。
死の穢れに触れることを強く拒んだためです。「私は友だから来たのだ、なぜ死人と間違えるのか」と言い、剣で喪屋を斬り倒しました。
雷神なのですか。
そう見る説があります。剣で建物を斬り倒して飛び去る情景が、雷が落ちる様と重なるためです。葛城の鴨氏が奉斎した点も根拠とされます。
アヂスキタカヒコネとアメノワカヒコは同じ神ですか。
古事記の物語では別の神です。容貌が似ている理由を死と再生の祭儀に求め、本来同一だったとみる研究説はあります。
アヂスキタカヒコネを祀る神社はどこですか。
奈良県御所市の高鴨神社です。阿遅志貴高日子根命、別名迦毛之大御神を主祭神としています。