かまどの神。オオトシの子とされる。
オキツヒコ・オキツヒメとは何の神様か
オキツヒコとオキツヒメはひとことで言えばかまどの神です。夫婦の二柱で一組とされ、オオトシの子にあたります。
古事記はこの二柱について、「諸人のもち拝く竈の神なり」と記します。
神の説明として、これほど直接的なものはめずらしいものです。社に祀られる神ではなく、家の中で祀られる神だとはっきり書いています。
オキツヒコ・オキツヒメの漢字表記と読み方
読みは「おきつひこ」「おきつひめ」です。「オキ(奥)」は家の奥を指します。
古代の家では、かまどは家の奥にありました。
別名の「オオヘヒメ(大戸比売)」の「ヘ(戸)」は、竈(かまど)を指す古語です。「ヘッツイ」という言い方が各地に残ります。
つまりどの名も、家の中のかまどそのものを指しています。
奥津日子神(おきつひこのかみ)
古事記での表記。
奥津比売命(おきつひめのみこと)
対になる女神。
大戸比売神(おおへひめのかみ)
オキツヒメの別名。
オキツヒコ・オキツヒメの物語
古事記が説明を加える
古事記は、系譜を淡々と並べるのが常です。しかしこの二柱には、説明が付いています。
此の奥津日子神、奥津比売命は、諸人のもち拝く竈の神なり。
この二柱は、人々が拝むかまどの神であるという意味です。
わざわざ「諸人(もろひと)」と書いています。貴族でも神職でもなく、普通の人々が拝んでいる、という説明です。
当時すでに、家庭で広く祀られていたことが分かります。
かまどは家そのもの
古代において、かまどは家の中心でした。
火を焚く。煮炊きする。暖をとる。
家族の単位を「竈(かまど)」で数えた時代があります。
「一竈(ひとかまど)」といえば一世帯を指しました。「竈を分ける」は分家すること、「竈を返す」は家が絶えることです。
いまの「所帯を持つ」にあたる言い方です。
かまどの神を祀ることは、家そのものを守ってもらうことでした。
荒神と重なる
社を持たない神
オキツヒコ・オキツヒメを祀る大きな社はほとんどありません。
家の中にいる神だからです。
神社に参る神と、家で祀る神は、別の系統です。
社の神 ─ アマテラス、八幡、稲荷…
家の神 ─ かまどの神、荒神、便所の神、井戸の神
家の神は、それぞれの場所ごとにいるとされました。台所、便所、井戸、床の間。
日本人の信仰の大半は、実は家の中にあったといえます。
オキツヒコ・オキツヒメの家系図と家族
オキツヒコ・オキツヒメの親: オオトシ
オキツヒコ・オキツヒメの性格と人物像
オキツヒコ・オキツヒメは、もっとも身近な神です。
物語もなく、大きな社もありません。それでも古事記が「諸人がもち拝む」と書くほど、広く祀られていました。
神話の主役ではないが、日々の暮らしの中にいる。
夫婦二柱で一組とされるのも、家庭を守る神にふさわしい形です。
記紀に名を残す神のなかで、もっとも多くの人に日常的に拝まれた神であった可能性があります。
オキツヒコ・オキツヒメを祀る神社
オキツヒコ・オキツヒメを主祭神とする社は多くありません。家の中で祀られる神だからです。
台所に荒神さまの棚を設ける習慣が、各地に残ります。三宝荒神として仏教と習合した形が広まりました。
竈神社という名の社が各地にありますが、多くは荒神やカグツチを祀ります。
オキツヒコ・オキツヒメが現代に残した痕跡
かまどの神は、言葉に残りました。
竈を分ける: 分家すること。かまどが世帯の単位だったことによる。
荒神さま: 台所に祀られる神。仏教の三宝荒神と習合した形。
ヘッツイ: かまどを指す古い言い方。「ヘ(戸)」に由来する。
オキツヒコ・オキツヒメのご利益
家内安全
かまど、つまり家そのものを守る神であることによる。
火防
火を扱う場所の神であることによる。
商売繁盛
飲食を扱う仕事の守り神とされることによる。
オキツヒコ・オキツヒメについてよくある質問
オキツヒコとはどんな神様ですか。
かまどの神です。オキツヒメと夫婦二柱で一組とされ、古事記は「諸人のもち拝く竈の神なり」と記しています。
なぜ神社が少ないのですか。
家の中で祀られる神だからです。社に参る神と、家で祀る神は別の系統で、かまどの神は後者にあたります。
荒神さまと同じですか。
後に重なりました。仏教の三宝荒神が日本では台所の神として定着し、火の神カグツチとも習合しています。