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日本神話

玉櫛媛(たまくしひめ)とは何の神様か|家系図・物語・祀る神社

玉櫛媛  / タマクシヒメ

大地 国津神

初代天皇の皇后ヒメタタライスズヒメの母。丹塗矢の話で知られる。

タマクシヒメとは何の神様か

タマクシヒメはひとことで言えば丹塗矢に突かれた女性です。ミシマノミゾクイの娘で、初代天皇の皇后ヒメタタライスズヒメの母にあたります。

三島溝樴姫勢夜陀多良比売活玉依姫ともいいます。

相手の神が書によって入れ替わる、日本神話でもっとも大きな異説のひとつの中心にいます。

タマクシヒメの漢字表記と読み方

読みは「たまくしひめ」です。「タマ」は玉「クシ」は櫛または奇しを指します。

は、髪に挿す道具であると同時に、呪力を持つ品でもありました。

イザナギが黄泉で櫛の歯に火をともし、スサノオクシナダヒメを櫛に変えて髪に挿しました。

古事記の「勢夜陀多良(せやだたら)」「タタラ」は、製鉄の踏み鞴を指すとみられます。娘の名にも同じ語が入ります。

玉櫛媛(たまくしひめ)

日本書紀での表記。

勢夜陀多良比売(せやだたらひめ)

古事記での表記。

三島溝樴姫(みしまのみぞくいひめ)

日本書紀の一書での表記。

活玉依姫(いくたまよりひめ)

先代旧事本紀での表記。

タマクシヒメの物語

  1. 丹塗矢の話
  2. 熊鰐になる神
  3. なぜ相手が違うのか
  4. 溝咋神社

丹塗矢の話

古事記の神武天皇段に、有名な話があります。

大久米命が、神武にこう語りました。

三嶋湟咋の女、名は勢夜陀多良比売、其れ容姿麗美故、美和の大物主神、見感でて、
其の美人の大便為すの時に、丹塗矢と化りて、其の大便為すの溝の流下より、其の美人のほとを突きたまひき。

驚いた娘が矢を持ち帰って床のそばに置くと、麗しい男に変わりました

生まれた娘が、富登多多良伊須須岐比売命、またの名を比売多多良伊須気余理比売です。

神の子であるから神御子という、と結ばれます。

熊鰐になる神

日本書紀は、まったく違う姿を伝えます。

事代主神が八尋熊鰐となって、三島溝樴姫、あるいは玉櫛姫に通って生まれた子が姫蹈鞴五十鈴姫命である。

矢ではなく、鰐です。相手もオオモノヌシではなくコトシロヌシです。

先代旧事本紀の地祇本紀も同様で、都味歯八重事代主神が八尋熊鰐となって活玉依姫のもとへ通い、三子を生んだとします。

天日方奇日方命 ─ 三輪氏・賀茂氏の祖。
姫踏韛五十鈴姫命 ─ 神武天皇の皇后。
五十鈴依姫命 ─ 綏靖天皇の皇后。

なぜ相手が違うのか

同じ女性の夫が、書によって変わります。

古事記 ─ オオモノヌシ。三輪山の神。
日本書紀・先代旧事本紀 ─ コトシロヌシ。美保の神。

どちらも出雲系の神である点は共通します。

違うのは、大和の王家がどちらの神と縁を結んだことにするかです。

三輪の神とすれば、大和の中心にある三輪山と結びます。美保の神とすれば、国譲りを承知した神と結びます。

宝賀寿男村島秀次は、系譜や世代関係から、コトシロヌシの実態はオオモノヌシと同一だと主張しました。

溝咋神社

この女性を祀る社は、父とともにあります。

溝咋神社 ─ 大阪府茨木市。

ミシマノミゾクイの名を、そのまま社名にしています。

茨木市は、淀川の北岸にあたる摂津の三島です。用水を引いて田を開いた土地で、父の名の「溝杭」はその作業を指します。

大阪府高槻市茨木市には、いまも古い水路の跡が残ります。

初代天皇の皇后を出した家が、水を引く仕事の名を持っていたことになります。

タマクシヒメの家系図と家族

タマクシヒメの親: ミシマノミゾクイ

タマクシヒメの妻・夫: 大物主丹塗矢の縁

タマクシヒメの子・子孫: ヒメタタライスズヒメ大田田根子三輪氏の系譜へ続く

タマクシヒメの性格と人物像

タマクシヒメは、選ばれた女性です。

自ら動いた記録はありません。矢に突かれ、あるいは鰐に通われ、子を生みました。

その子が、大和最初の皇后になりました。

名が四つあり、夫の神も書によって変わります。本人が誰であるかより、誰の母であるかが記録されたという形です。それでも、丹塗矢の話は日本神話でもっとも有名な場面のひとつとして語り継がれています。

古事記と日本書紀でタマクシヒメの記述が異なるところ

日本神話は一冊にまとまっていません。タマクシヒメについても、 古事記と日本書紀で記述が分かれる箇所が1件あります。 どちらか一方に決めず、両方を出典つきで載せています。

記述が分かれるところ

古事記712年

中巻・神武天皇記

  • 大物主 ─ 丹塗矢の縁 ─ タマクシヒメ

古事記はオオモノヌシが丹塗矢となってセヤダタラヒメと結ばれたとする。

日本書紀720年

巻第三・神武天皇紀

  • コトシロヌシ ─ 熊鰐の縁 ─ タマクシヒメ

日本書紀はコトシロヌシが八尋の熊鰐となって玉櫛媛のもとへ通ったとする。

タマクシヒメを祀る神社

この女性を祀るのは、大阪府茨木市の溝咋神社です。父ミシマノミゾクイの名をそのまま社名にしています。

茨木市は淀川の北岸にあたる摂津の三島で、用水を引いて田を開いた土地です。

奈良県大和高田市の石園座多久虫玉神社にも関わりが伝えられます。娘のヒメタタライスズヒメは、橿原神宮に神武天皇とともに祀られます。

溝咋神社(みぞくいじんじゃ)

式内社

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溝咋神社の住所: 大阪府茨木市五十鈴町9-21

溝咋神社の御祭神: 玉櫛媛命・媛蹈鞴五十鈴媛命

溝咋神社のご利益: 縁結び

この女性と娘のヒメタタライスズヒメを祀る。父ミシマノミゾクイの名を社名とする。

周辺の宿をさがす

溝咋神社へ参拝するときの、大阪府茨木市の宿を探せます。

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タマクシヒメが現代に残した痕跡

タマクシヒメの名は、丹塗矢の話に残りました

丹塗矢: 赤く塗った矢。オオモノヌシが姿を変えて溝を流れ下ったとされる。

溝咋神社: 大阪府茨木市の社。父の名をそのまま社名とする。

タタラ: 製鉄の踏み鞴。この女性と娘の名に含まれる。

タマクシヒメのご利益

縁結び

神と結ばれた伝えによる。

子授け

皇后を生んだ母であることによる。

安産

同上。

タマクシヒメについてよくある質問

タマクシヒメとはどんな神様ですか。

ミシマノミゾクイの娘で、初代神武天皇の皇后ヒメタタライスズヒメの母です。古事記では勢夜陀多良比売と記されます。

夫は誰ですか。

書によって変わります。古事記ではオオモノヌシが丹塗矢に変わって結ばれ、日本書紀と先代旧事本紀ではコトシロヌシが八尋熊鰐となって通ったとされます。

祀っている神社はありますか。

大阪府茨木市の溝咋神社です。父ミシマノミゾクイの名をそのまま社名にしています。

タマクシヒメと併せて覚えたい言葉・用語

国譲り(くにゆずり)

オオクニヌシが葦原中国の統治権を天津神に明け渡した出来事。