南を守る赤い鳥。夏と火にあてられる。鳳凰とは本来べつの存在。
朱雀とは何の神様か
朱雀はひとことで言えば南の空の星をつないだ鳥です。
四神の一つで、南・夏・赤・火を受け持ちます。朱鳥とも呼ばれます。
もとは星です。二十八宿のうち南の空の七宿(井・鬼・柳・星・張・翼・軫)を鳥に見立てたもので、「翼」はそのまま朱雀の翼にあたります。中央の星宿は、西洋の星座ではうみへび座の心臓部にあたり、そこにあるオレンジ色の二等星が、赤い鳥という姿の成り立ちに関わった可能性が指摘されています。
朱雀と鳳凰は、しばしば同じものとして語られますが、本来はべつの存在です。 朱雀は方角の体系の中の一柱であり、鳳凰はめでたい世に現れる瑞獣です。姿が似ているため、後世に重ねられました。同じ起源とする説もあります。
福建省では、朱雀のかわりに赤虎を置く土地もあります。
朱雀の漢字表記と読み方
日本語ではすざくが最も一般的で、すじゃく・しゅじゃくとも読みます。「あかすずみ」と読まれた可能性を指摘する説もあります。
注意したいのが「炎帝」です。 俳句の夏の季語としての炎帝は朱雀と同じものを指しますが、神農と同一視される炎帝とは別です。同じ字で違うものを指すので、文脈で見分ける必要があります。
日本では、『日本書紀』に現れない年号として朱雀が寺社の縁起や地誌に散見されます。天武天皇が定めた元号朱鳥(686年)の別称・美称とする説が通説です。
朱雀(すざく)
一般的な表記。「すじゃく」「しゅじゃく」とも読む。
朱鳥(しゅちょう)
別の呼び名。天武天皇の元号「朱鳥」もこの字を用いる。
炎帝(えんてい)
俳句における夏の季語。南・赤・夏を司る存在として、朱雀と同じものを指す。神農と同一視される炎帝とは別。
朱雀の物語
南の空の七宿 ─ 翼という名の星
朱雀のはじまりも、星です。
二十八宿のうち南に並ぶ七つ──井・鬼・柳・星・張・翼・軫──をまとめて朱雀と呼びました。
注目すべきは、名前そのものが鳥の体を指していることです。
翼宿は、朱雀の翼である。
中央にある星宿は、西洋の星座ではうみへび座の心臓部にあたります。その中心はうみへび座で最も明るい星で、「孤独な者」を意味する名を持つ二等星です。明るい星の少ない領域にあって目立つため、中国の天文家にも古くから知られていました。
このオレンジ色の星が、赤い鳥という姿の成り立ちに関わった可能性が指摘されています。 橙色の胸を持つ鳥とともに、朱雀の像を作ったのではないか、という見方です。
確かめられてはいませんが、星の色が神獣の色を決めたという筋道は、四神の成り立ちによく合っています。
鳳凰との違い ─ 重ねられた二羽
朱雀を語るとき、必ず出るのが鳳凰との関係です。
姿はよく似ています。赤い翼を広げた鳥として描かれ、鳳凰の姿で表されることもあります。同じ起源とする説もあり、実際に同一視されてきました。
しかし、役割がまったく違います。
朱雀は、南を受け持つ四神の一柱。 鳳凰は、聖天子の世に現れる瑞獣。
朱雀はいつも南にいます。 現れたり消えたりしません。鳳凰はめったに現れません。 現れること自体が意味を持ちます。
常にいるものと、めったに現れないもの。 この違いは決定的です。
もうひとつ、朱雀は「神格のある鳥」であって、信仰の対象として拝まれる神ではないという点も押さえておきたいところです。四神は方角の印であり、願いを聞く神ではありませんでした。
平安京に残る ─ 朱雀門と朱雀大路
朱雀の名は、日本の都の造りにそのまま残っています。
平安京の南の正門は朱雀門と呼ばれました。そこから南へまっすぐ伸びる大路が朱雀大路です。都を東西に分ける中心線であり、東を左京、西を右京としました。
南の門に、南の神獣の名を付ける。
方角の印が、そのまま都市の設計に使われているわけです。平城京にも同じ名の門と大路がありました。
明日香村のキトラ古墳では、石槨の南の壁に朱雀が描かれています。奈良の薬師寺金堂の本尊台座にも四神がそろっています。
キトラ古墳の朱雀は、四神の中でも保存の状態がよく、羽を広げた姿がはっきり見て取れます。 発掘された壁画は取り外され、保存処理を経て公開されています。
夏を「朱夏」と呼ぶのも、この配色によります。
朱雀の家系図と家族
朱雀の性格と人物像
朱雀にも、個別の物語はありません。
四神は世界を四つに区切る印であり、一柱ずつの事績は求められませんでした。朱雀も例外ではありません。
それでも朱雀には、他の三神と違う難しさがあります。鳳凰と混ざりやすいことです。
竜・虎・亀と蛇は、それぞれ姿がはっきり分かれています。ところが朱雀は「赤い鳥」であり、中国にはもう一羽、鳳凰という大きな鳥がいます。
姿が似ていて、どちらもめでたい。
混ざらないほうが不思議なくらいです。実際、古くから同一視されてきました。
それでも区別する意味はあります。 朱雀は動きません。南にいて、南を守る。現れたり消えたりする鳳凰とは、果たす働きがまるで違います。
動かないことが、この神獣の性格です。 都の門に名を付けられたのも、動かない目印だからでした。
朱雀ゆかりの地と遺跡
朱雀だけを祀る廟の住所を、一次情報で確かめられませんでした。 そのため、この欄には何も入れていません。
日本では、明日香村のキトラ古墳の石槨の南壁と、奈良の薬師寺金堂の本尊台座に姿が残ります。京都の朱雀門跡、平城宮跡の朱雀門も、この神獣の名を伝える場所です。
いずれも「朱雀を祀る社」ではなく「朱雀の名や姿が残る場所」です。 区別が必要なため、欄には入れていません。
朱雀が現代に残した痕跡
朱雀の名は、都の造りに残りました。
朱雀門: 平城京・平安京の南の正門。平城宮跡では復元された門を見ることができる。
朱雀大路: 朱雀門から南へ伸びる都の中心の大路。都を左京と右京に分けた。
朱鳥: 天武天皇が定めた元号(686年)。朱雀の別称・美称とする説が通説。
朱夏: 夏を指す言い方。南・赤・夏という配当から生まれた語。
朱雀のご利益
方除け
南を守る神獣として、方角にまつわる災いを避ける願いを受ける。
火防
火を司る配当から、火にまつわる守りを願う対象とされる。
開運
めでたい鳥の姿から、運を開く願いに結び付けられる。
家宅守護
四神相応の考え方で、南の守りとして土地と家を守るとされる。
朱雀が登場するゲーム・アニメ
創作では、朱雀はほぼ確実に炎を扱う存在として描かれます。 火の配当がそのまま能力になるためです。
また、しばしば不死鳥の性質を与えられます。これは西洋のフェニックスや鳳凰と混ざったもので、原典の朱雀に生き返る話はありません。
朱雀が登場するアニメ・漫画
四神を題材にした作品群
四人の守護者に四神を割り当てる構成で、朱雀は炎を扱う担い手にされることが多いです。
平安京を舞台にした作品
朱雀門と朱雀大路は、平安京を描くうえで欠かせない舞台になっています。
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朱雀についてよくある質問
朱雀は何の神様ですか。
南を守る神獣です。四神の一つで、夏・赤・火を受け持ちます。もとは南の空の七つの星宿を鳥に見立てたもので、五行説と結び付いて赤い鳥の姿が定まりました。
朱雀と鳳凰は同じですか。
本来はべつの存在です。朱雀は南を受け持つ四神の一柱で、鳳凰はめでたい世に現れる瑞獣です。姿が似ているため後世に重ねられ、同じ起源とする説もあります。
朱雀は火から生き返るのですか。
原典にそのような話はありません。生き返る性質は、西洋の不死鳥と混ざって創作の中で与えられたものです。朱雀は南にいて南を守る神獣であり、死や再生の物語を持ちません。
朱雀大路とは何ですか。
平城京・平安京の南の正門である朱雀門から、南へまっすぐ伸びる中心の大路です。この道が都を東西に分け、東を左京、西を右京としました。