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日本神話

イブキドヌシ(気吹戸主神)とは何の神様か|家系図・物語・祀る神社

気吹戸主神  / イブキドヌシノカミ

天津神

祓戸四神の三番目。呑まれた罪穢を根の国へ息で吹き送る。

イブキドヌシとは何の神様か

イブキドヌシはひとことで言えば息で穢れを送る神です。大祓詞に見える祓戸四神の一柱で、三番目にあたります。

瀬織津比売が罪穢を川から海へ流し、速開都比売が海の底で呑み込む。その様子を見届けて、この神が根の国・底の国へ息吹を放ちます

目に見えないものを、目に見えない息で送り出す。四柱のなかでもっとも捉えどころのない働きです。

イブキドヌシの漢字表記と読み方

読みは「いぶきどぬし」です。「イブキ」は息吹「ド(戸)」は場所「ヌシ」は司る者を指します。

息を吹く場所を司る神という形です。

「イブキ」は、いまも息吹という語に残っています。

近江と美濃の境にある伊吹山も同じ音を持ちますが、この神との直接の関係を示す記録はありません。名の一致から結びつけて語られることがある点には、注意が必要です。

気吹戸主神(いぶきどぬしのかみ)

大祓詞での表記。

伊吹戸主神(いぶきどぬしのかみ)

別の書き方。

気吹戸主命(いぶきどぬしのみこと)

社での表記。

イブキドヌシの物語

  1. 四柱のうち三番目
  2. 根の国へ送るという発想
  3. 直毘神と同じ神とする説
  4. なぜ記録が少ないのか

四柱のうち三番目

大祓詞は、罪穢が消えるまでを四段に分けます。

一 瀬織津比売 ─ 川から海へ流す。
二 速開都比売 ─ 海の底で呑み込む。
三 気吹戸主 ─ 根の国へ息を吹き送る。
四 速佐須良比売 ─ 根の国でさすらわせ、失わせる。

この神は、呑み込まれたのを確認してから働きます。

順番が定まっている点が重要です。前の神の仕事が終わらなければ、この神の出番は来ません。手順として組まれた神々であることが、ここによく表れています。

根の国へ送るという発想

穢れは、消えるのではなく移されるという考え方をします。

川へ。海へ。海の底へ。そして根の国・底の国へ。

根の国は、地の底にあるとされる世界です。スサノオが向かった国でもあります。

つまり穢れは、この世からいちばん遠い場所へ運ばれるわけです。

そこでようやく、四番目の速佐須良比売がさすらわせて失わせます。

消滅ではなく移送。この考え方は、日本の祓の根本にあります。人形に穢れを移して川に流す習わしも、同じ発想です。

直毘神と同じ神とする説

この神の正体については、古くから当てはめが行われてきました。

倭姫命世記は、こう記します。

伊吹戸主、またの名を神直日神・大直日神と曰う。

弘法大師の作と伝えられる中臣祓訓解も、聞き直し見直し給う神として同じ立場を採ります。

本居宣長もこの解釈に従いました。

直毘神は、禍津日神がもたらした災いを直す神です。曲がったものをまっすぐに戻すという働きが、穢れを送り出す働きと重ねられました。

ただしこれは解釈であって、記紀に根拠があるわけではありません。

なぜ記録が少ないのか

この神は、古事記にも日本書紀にも名が見えません

延喜式の大祓詞。
大祓詞をめぐる後世の注釈。

現れるのはここだけです。

祝詞研究の青木紀元は、祓戸四神のうち記紀に対応が見えるのは速開都比売だけだと指摘し、他は大祓詞の文章のなかで生まれた観念的な神々だと述べています。

宗教的というより文芸的な性格が強い、というのがその評価です。

名の三文字が働きを説明しきってしまうため、それ以上の物語が必要なかった、と読むこともできます。

イブキドヌシの家系図と家族

イブキドヌシのきょうだい: ハヤサスラヒメ祓戸四神

イブキドヌシの性格と人物像

イブキドヌシは、息だけの神です。

姿がありません。系譜もありません。物語もありません。あるのは、根の国へ向かって息を吹くという一つの動作だけです。

それでも、日本中の神社で毎日その名が唱えられています。

六月と十二月の大祓では、参列した人々が声をそろえてこの神の働きを唱えます。物語を持たないまま、口伝えで千年以上生き続けた神です。

イブキドヌシを祀る神社

この神を祀る社としては、滋賀県大津市の佐久奈度神社が代表です。祓戸四神をそろえて祀ります。

多くの神社では、祓戸社として境内の一角に四柱まとめて祀られます。

三重県亀山市の片山神社、京都府伊根町の浦嶋神社、東京都港区の日比谷神社などにも名が伝わります。

大神神社(おおみわじんじゃ)

大和国一宮

地図で開く

大神神社の住所: 奈良県桜井市三輪1422

大神神社の御祭神: 大物主大神

大神神社のご利益: 厄除け

摂社の綱越神社が祓戸大神を祀る。この神もその一柱に数えられる。

周辺の宿をさがす

大神神社へ参拝するときの、奈良県桜井市の宿を探せます。

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イブキドヌシが現代に残した痕跡

イブキドヌシの名は、大祓詞に残りました

大祓詞: 六月と十二月の晦日に唱えられる祝詞。この神の働きが記される。

根の国: 地の底にあるとされる世界。穢れの送り先。

息吹: 息を吹くこと。この神の名の由来で、いまも日常語として使われる。

イブキドヌシのご利益

厄除け

罪穢を根の国へ送る働きによる。

心身清浄

大祓の中心をなす神であることによる。

イブキドヌシについてよくある質問

イブキドヌシとはどんな神様ですか。

大祓詞に見える祓戸四神の三番目です。速開都比売が罪穢を呑み込んだのを見届けて、根の国・底の国へ息吹を放ちます。

記紀に出てきますか。

古事記にも日本書紀にも名は見えません。延喜式の大祓詞と、その注釈に現れる神です。

伊吹山と関係がありますか。

同じ音を持ちますが、直接の関係を示す記録はありません。名の一致から結びつけて語られることがある点には注意が必要です。

イブキドヌシと併せて覚えたい言葉・用語

根の国(ねのくに)

地の底にあるとされる国。スサノオが最終的に治める。黄泉の国と同一視されることもある。