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中国神話

嚳とは何の神様か|家系図・物語

帝嚳  / コク

大地 五帝

五帝の一人。四人の妃から、周と殷の始祖を含む子らが生まれたとされる。

嚳とは何の神様か

嚳はひとことで言えば系譜の結び目として置かれた帝です。

五帝の一人に数えられ、高辛氏とも呼ばれます。黄帝の曾孫にあたるとされます。

事績そのものは多く伝えられていません。この帝が重んじられるのは、子孫の側からです。

四人の妃がいたとされ、

姜嫄からは、周の始祖となる后稷。 簡狄からは、殷の始祖となる契。 慶都からは、のちの堯。

と伝えられます。つまり、後の王朝がそれぞれ自分の祖をこの一柱にさかのぼらせたことになります。

暦を正し、四季の順序を人に知らせたとも伝えられます。

事績の少なさは、この帝の役割そのものです。 誰かの祖であることが、この帝に与えられた仕事でした。

嚳の漢字表記と読み方

日本語ではこくと読みます。一字だけでは読みにくいため、書物では帝嚳と「帝」を添えて記されるのが普通です。

「嚳」の字は、この帝を書くためにほぼ専用で使われます。

高辛氏という呼び名もよく使われます。 五帝はそれぞれ氏の名を持ち、黄帝は軒轅氏、顓頊は高陽氏、嚳は高辛氏と呼ばれました。「高陽」「高辛」と対になっているところに、後から整えられた体系であることがうかがえます。

嚳(こく)

一字での表記。読みにくい字だが、この帝以外にはほとんど使われない。

帝嚳(ていこく)

「帝」を付けた形。書物ではこちらが多い。

高辛氏(こうしんし)

氏としての呼び名。都を亳に置いたことにちなむとも伝えられる。

嚳の物語

  1. 四人の妃 ─ 王朝がここから分かれる
  2. 暦を正す ─ わずかに残る事績
  3. なぜ記録が少ないのか ─ 五帝という枠組み

四人の妃 ─ 王朝がここから分かれる

嚳の物語の中心は、妃と子です。

伝えられる四人の妃と、その子はこうです。

姜嫄は后稷を生み、周の始祖になった。 簡狄は契を生み、殷の始祖になった。 慶都は放勲、のちの堯を生んだ。 常儀は摯を生み、堯の前に位に就いた。

周・殷・堯。中国の歴史の主要な流れが、一人の帝から分かれています。

しかも、后稷と契の生まれ方はどちらも普通ではありません。姜嫄は巨人の足跡を踏んで身ごもり、簡狄は燕の卵を飲んで身ごもったとされます。

父が嚳であると同時に、母の側には別の起源譚がある。 二つの説明が重なっているのです。

これは、もともと別々に伝えられていた王朝の始祖神話を、後の時代に一本の系譜へまとめた跡だと考えられています。

暦を正す ─ わずかに残る事績

嚳自身の事績として伝えられるものは、多くありません。

伝えられるのは、四季の順序を人に知らせたこと、日月の運行に従って政を行ったことです。つまりです。

日月の巡りに従い、鬼神を敬い、民に時を知らせた。

農耕にとって、いつ種をまきいつ刈るかは死活にかかわります。暦を正すことは、統治そのものでした。

音楽についても伝えがあります。臣下に命じて曲を作らせ、鳥や獣が舞ったとされます。

事績が少ないことを「資料が乏しい」と片づけるべきではありません。 五帝という枠組みが後から整えられたとき、嚳に割り当てられたのが「つなぐ役」だったと読むほうが、話の形に合っています。

なぜ記録が少ないのか ─ 五帝という枠組み

五帝の顔ぶれは、書物によって違います。

『史記』五帝本紀は、黄帝・顓頊・嚳・堯・舜を挙げます。ほかに少昊を入れる説、伏羲神農を入れる説があり、一つに定まっていません。

嚳は、どの並びでも比較的地味な位置にいます。黄帝には蚩尤との戦いがあり、堯と舜には譲位の物語があり、顓頊には天と地の道を絶った話がある。嚳にはそれがありません。

かわりに嚳が持っているのは、四人の妃と、そこから分かれた王朝です。

物語のある帝と、系譜のための帝。

五帝という枠組みは、それぞれ別の土地・別の氏族に伝わっていた祖先の話を、一本の系図に並べ直したものだと考えられています。並べ直すときには、つなぎ目に置く人物が要ります。

記録が少ないのではなく、つなぐことが役割だった。 そう見るのが、いちばん筋が通ります。

嚳の家系図と家族

嚳の親: 黄帝曾孫にあたるとされる

嚳の子・子孫: 慶都との子

嚳の性格と人物像

嚳の人物像は、「公平であること」に尽きます。

伝えられる評は簡素です。生まれながらに神妙で、自分の名を言った。物を取っても余さず、与えても偏らなかった。日月の巡りに従い、鬼神を敬った。

遍く天下に及んで、偏るところがなかった。

派手な功績も、失敗も語られません。過不足がないことだけが語られる帝です。

これは、四つの王朝の祖を同時に抱える立場と無関係ではないでしょう。周の祖も殷の祖も、この帝の子とされました。どちらかに肩入れした帝では、系譜が成り立ちません。

偏らないことが、この帝の役割であり、性格でもありました。

事績の少なさを物足りなく感じるかもしれませんが、五帝を並べたときに嚳が果たしている働きは、けっして小さくありません。

嚳ゆかりの地と遺跡

嚳を祀る施設の住所を、一次情報で確かめられませんでした。 そのため、この欄には何も入れていません。

河南省商丘市には帝嚳の陵とされる場所が伝えられますが、公式の記載を確かめられなかったため、住所は書きません。

日本に嚳を祀る社はありません。 五帝の中でも、日本での知名度はもっとも低い一柱です。

ただし、この帝の子とされる后稷は穀物の神として、は殷の祖として、それぞれ中国で祀られてきました。祀られているのは子の側です。

嚳が現代に残した痕跡

嚳の名は、系譜の言葉として残りました。

高辛氏: 嚳の氏の名。顓頊の高陽氏と対になり、後世の姓氏の由来として引かれる。

五帝: 黄帝・顓頊・嚳・堯・舜を並べる枠組み。『史記』五帝本紀がその形を定めた。

玄鳥: 簡狄が燕の卵を飲んで契を身ごもったという話。『詩経』商頌に「天、玄鳥に命じて、降りて商を生ましむ」とある。

嚳のご利益

子孫繁栄

四人の妃から多くの王朝の祖が生まれたとされ、家の続くことを願う対象とされる。

秩序

偏らず公平であったと伝えられ、物事の順序を保つ神とされる。

農耕

暦を正して四季の順序を知らせたとされ、農の営みを支える神とされる。

公正

与えるに偏らなかったという評から、公平さを願う対象とされる。

嚳が登場するゲーム・アニメ

嚳は、創作にほとんど登場しません。 戦いも恋も裏切りもない帝を、物語に組み込むのは難しいためでしょう。

かわりに、系譜図の中では必ず現れます。周と殷の始祖をたどれば、必ずこの帝に行き当たるからです。

嚳が登場するゲーム

中国史を題材にした戦略ゲーム

古代の帝として名が挙がることがあります。

女神転生シリーズ

五帝そのものは登場しませんが、中国神話の枠組みとして名が引かれます。

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嚳が登場するアニメ・漫画

封神演義(漫画・アニメ)

殷の始祖である契の父として、前史に名が現れます。

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嚳についてよくある質問

嚳は何の神様ですか。

五帝の一人に数えられる神話上の帝王です。高辛氏とも呼ばれ、暦を正して四季の順序を人に知らせたとされます。四人の妃から、周と殷の始祖を含む子らが生まれたと伝えられます。

嚳はどう読みますか。

「こく」と読みます。一字では読みにくいため、書物では「帝嚳(ていこく)」と記されることが多い字です。

なぜ嚳の事績は少ないのですか。

五帝という枠組みが後から整えられたとき、この帝に割り当てられたのが「つなぐ役」だったからだと考えられます。別々に伝わっていた王朝の始祖神話を一本の系図に並べ直すには、つなぎ目となる人物が必要でした。

嚳の子には誰がいますか。

周の始祖となる后稷、殷の始祖となる契、のちの帝となる堯、そして摯が伝えられます。それぞれ母が異なり、后稷の母は巨人の足跡を踏んで、契の母は燕の卵を飲んで身ごもったとされます。