フトダマの后神。忌部氏の祖神の一柱で、房総に祀られる。
アメノヒリトメとは何の神様か
アメノヒリトメの漢字表記と読み方
読みは「あめのひりとめ」、または「あまのひりのめ」です。
表記が二つに分かれています。
正史(続日本後紀ほか) ─ 天比理刀咩命。
延喜式神名帳 ─ 天比理乃咩命。
正史のほうが成立が古いため、本来は「刀」が正しく、神名帳が誤って「乃」と記したとする説があります。
一字の違いが、読みまで変えてしまった例です。
天比理刀咩命(あめのひりとめのみこと)
続日本後紀・日本文徳天皇実録・日本三代実録での表記。
天比理乃咩命(あまのひりのめのみこと)
延喜式神名帳での表記。
アメノヒリトメの物語
正史と式で字が違う
この女神をめぐる最初の問題は、名の一字です。
続日本後紀、日本文徳天皇実録、日本三代実録 ─ 天比理刀咩命。
延喜式神名帳 ─ 天比理乃咩命。
成立が古いのは、正史のほうです。
そのため、本来は「刀」が正しく、神名帳が誤ったとする説が唱えられています。
延喜式神名帳は、全国の官社を列挙した基本史料です。それでも書き誤りがある。史料を扱う難しさを示す例として、しばしば引かれます。
洲崎と洲宮
この女神を祀る社は、館山市に二つあります。
洲崎神社 ─ 館山市洲崎。
洲宮神社 ─ 館山市洲宮。
どちらも安房国の后神天比理乃咩命神社の論社です。
式内社がどちらかをめぐって、古くから争われてきました。
洲崎神社は東京湾の入口を望む岬にあり、対岸の三浦半島とあわせて海の関門を守る位置にあります。
安房神社にも祀られ、こちらは夫フトダマを主祭神とします。
江戸湾を渡る
この女神の名は、房総を越えて広がりました。
品川神社 ─ 東京都品川区。
洲崎大神 ─ 神奈川県横浜市神奈川区。
いずれも江戸湾(東京湾)沿いです。
洲崎大神は、社名からも安房の洲崎との関わりが読み取れます。
安房の海人が湾を渡り、対岸へ広がった跡だと考えられています。
海を渡って信仰が動くという点で、忌部氏が阿波から房総へ渡った話と同じ形をしています。
孫が房総を開く
この女神の位置は、系譜のなかでよく分かります。
夫 フトダマ ─ 天岩戸で祭具を捧げた神。忌部氏の祖。
孫 アメノトミ ─ 阿波から房総へ渡り、麻と穀を植えた。
孫が渡った先に、祖母を祀る社があります。
アメノトミは、安房の地に祖父フトダマを祀りました。それが安房神社の起こりです。
そして祖母のこの女神は、洲崎と洲宮に祀られました。一族の三代が、同じ土地の社に配置されているという形になります。
アメノヒリトメの家系図と家族
アメノヒリトメの性格と人物像
アメノヒリトメは、海の入口を守る女神です。
物語はありません。事績も伝えられていません。あるのは、フトダマの后であるということと、安房の岬に祀られているということだけです。
しかし、その岬は東京湾の入口です。
船が江戸湾へ入るとき、必ず前を通ります。位置が信仰を作った神といえます。名の一字さえ揺れていながら、社は千年以上その場所にあり続けました。
アメノヒリトメを祀る神社
この女神を祀るのは、千葉県館山市の洲崎神社と洲宮神社です。どちらも安房国の后神天比理乃咩命神社の論社にあたります。
夫フトダマを主祭神とする安房神社にも祀られます。
東京都品川区の品川神社、神奈川県横浜市の洲崎大神にも名が伝わり、江戸湾を渡って広がった跡が読み取れます。
洲崎神社(すのさきじんじゃ)
安房国一宮の論社
この女神を主祭神とする社。安房国の后神天比理乃咩命神社の論社。
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アメノヒリトメが現代に残した痕跡
アメノヒリトメの名は、洲崎という地名に残りました。
洲崎: 千葉県館山市の岬。東京湾の入口を望む。
后神天比理乃咩命神社: 延喜式神名帳に記される安房国の社。洲崎神社と洲宮神社が論社。
忌部氏: 祭りの道具を作った一族。フトダマを祖とする。
アメノヒリトメのご利益
航海安全
東京湾の入口を望む岬に祀られたことによる。
産業繁栄
忌部氏の祖神の一柱であることによる。
アメノヒリトメについてよくある質問
アメノヒリトメとはどんな神様ですか。
フトダマの后神で、忌部氏の祖神の一柱です。千葉県館山市の洲崎神社と洲宮神社に祀られます。
なぜ表記が二通りあるのですか。
正史では天比理刀咩命、延喜式神名帳では天比理乃咩命と記されます。正史のほうが古いため、神名帳が「刀」を「乃」と誤ったとする説があります。
アメノトミとはどんな関係ですか。
祖母にあたるとされます。孫のアメノトミが阿波から房総へ渡り、祖父フトダマを祀って安房神社を起こしたと伝えられます。