日の光を受けて生まれた赤い玉から化生した女神。アメノヒボコの妻。
アカルヒメとは何の神様か
アカルヒメはひとことで言えば玉から生まれた女神です。新羅の沼で昼寝をしていた女に日の光が虹のように差し、生まれた赤い玉が美しい娘に変わりました。
新羅の王子アメノヒボコがその玉を得て正妻としますが、驕った夫に罵られて日本へ渡ります。
難波の比売碁曾の社に鎮まる神が、この女神だと古事記は記します。
アカルヒメの漢字表記と読み方
読みは「あかるひめ」です。「アカル」は明る、「ヒメ」は女神を指します。
名義は「色美しくつやのある女性」と考える説があります。
また、日の出の太陽を表す赤い瑪瑙の玉の化身とする説もあります。
生まれの筋がそのまま名になっている、と読むことができます。赤い玉から生まれた明るい姫、という並びです。
阿加流比売神(あかるひめのかみ)
古事記での表記。
阿迦留姫命(あかるひめのみこと)
姫嶋神社での表記。
赤留比売命(あかるひめのみこと)
大阪市平野区の社での表記。
アカルヒメの物語
沼に差した日の光
古事記の応神天皇記に、この女神の出生が記されます。
新羅のアグヌマという沼で、女が昼寝をしていました。
その陰部に、日の光が虹のようになって当たった。
女はたちまち身ごもって、赤い玉を産んだ。
それを見ていた男が玉をもらい受け、肌身離さず持ち歩きます。
ある日、牛で食べ物を運んでいた男は、アメノヒボコに出会いました。牛を殺して食べるつもりだと疑われ、牢に入れられそうになります。
許しを乞うために差し出したのが、その赤い玉でした。
玉を持ち帰って床に置くと、美しい娘になりました。
罵られて海を渡る
アメノヒボコは娘を正妻とし、娘は毎日おいしい料理を出しました。
ところが、ある日のことです。
驕り高ぶった夫が、妻を罵った。
妻は親の国に帰ると言い、小舟に乗って難波の津へ逃げました。
古事記はここで、その娘が難波の比売碁曾の社に鎮まる阿加流比売神である、と結びます。
アメノヒボコは妻を追って日本へ渡りますが、難波の渡りの神に阻まれ、但馬に留まったと記されます。追いかけた側の物語のほうが、のちに大きく語られました。
日本書紀では名が消える
日本書紀の垂仁天皇条に、よく似た話があります。
都怒我阿羅斯等という意富加羅国の王子が、牛の代償に白い石を譲り受けました。持ち帰って寝床に置くと、美しい娘になります。
ところが、目を離した隙に娘は消えてしまった。
娘は難波へ、そして豊国の国前郡へ至り、二か所で祀られた。
ここには神の名が書かれていません。
夫の名も国名も、古事記とは違います。同じ話が、登場人物を入れ替えて二度記録された形になっています。摂津国風土記逸文にも、新羅から逃れた女神の話が伝わります。
日光感精と卵生
この出生譚には、二つの神話の型が重なっています。
日光感精神話 ─ 日の光を受けて身ごもる。
卵生神話 ─ 卵や玉から人が生まれる。
同じ組み合わせは、高句麗の始祖東明聖王(朱蒙)の伝説にも見られます。
新羅の始祖赫居世、伽耶の金官国の始祖首露王の出生譚にも卵生の型があります。
渡来の神であることが、話の型そのものにも表れているということになります。
アカルヒメの家系図と家族
アカルヒメの妻・夫: アメノヒボコ
アカルヒメの性格と人物像
アカルヒメは、逃げた妻です。
玉から生まれ、毎日おいしい料理を出しました。しかし罵られたその日に、国を捨てて海を渡りました。
戻ってはいません。
追ってきた夫のアメノヒボコとは、二度と一緒になりません。日本の神話で、妻の側が去って、そのまま別々に祀られる例はごく少なく、この女神はその代表です。難波の社に鎮まったという結びは、逃げた先で神になったという意味でもあります。
アカルヒメを祀る神社
この女神を祀る社は、難波とその周辺に集まります。
大阪市東成区の比売許曽神社は、古事記の「難波の比売碁曾社」にあたるとされます。ただし現在の主祭神は下照比売命です。
大阪市西淀川区の姫嶋神社、平野区の赤留比売命神社にも祀られます。
大分県姫島村の比売語曽社は、日本書紀が伝える「豊国の比売語曾社」に比定されます。
アカルヒメが現代に残した痕跡
アカルヒメの名は、渡ってきた道筋に残りました。
比売許曽: 難波に鎮まったとされる社の名。大阪市東成区に同名の社がある。
姫島: 摂津国風土記逸文で、この女神が名づけたとされる島。大阪市西淀川区の地名に残る。
香春岳: 豊前国風土記逸文に、新羅の神が渡来して住んだと記される山。
アカルヒメのご利益
縁結び
女性の願いを聞く神として信仰されたことによる。
再出発
国を離れて渡ってきた伝えによる。
アカルヒメについてよくある質問
アカルヒメとはどんな神様ですか。
新羅の沼で日の光を受けて生まれた赤い玉が娘に変わったとされる女神です。アメノヒボコの正妻となりましたが、罵られて難波へ渡りました。
日本書紀にも同じ話がありますか。
垂仁天皇条に、都怒我阿羅斯等が白い石から得た娘が難波と豊国へ去るという似た話があります。ただし神の名は記されていません。
朝鮮半島の神話と関係がありますか。
日の光を受けて身ごもる話と、玉や卵から生まれる話が重なっており、高句麗の始祖東明聖王の伝説とよく似た型を持っています。