住吉三神の一柱。海の表面を司る。
表筒男命とは何の神様か
表筒男命の漢字表記と読み方
読みは「うわつつのお」です。「ウワ」は上・表を指します。
「ウワベ(上辺)」「ウワサ(噂)」「ウワギ(上着)」の「ウワ」と同じ語です。いずれも表面にあるものを意味します。
古事記は「上」、日本書紀は「表」の字を当てます。読みは同じです。
三柱のなかで、もっとも人の目に触れる部分を担当しています。
表筒男命(うわつつのおのみこと)
日本書紀・住吉大社での表記。
上筒之男神(うわつつのおのかみ)
古事記での表記。
表筒男命の物語
最後に生まれる
禊の場面で、三柱は底から順に生まれます。
底 → 中 → 表
深いところから、浅いところへ。
イザナギは、まず深く潜り、次に中ほど、最後に表面で身を洗いました。
つまり表筒男命は、禊の最後に生まれた神です。
身を清め終わったところで現れる。もっとも清らかな段階にあたるとする読み方があります。
船が触れる面
航海において、船が接するのは海の表面だけです。
波の高さ。風の向き。潮の流れ。
いずれも表面で起きることです。
底や中ほどの状態は、当時の技術では知りようがありませんでした。
それでも三柱に分けたのは、海を全体として捉えようとしたためと考えられます。
見えない部分にも神を置く。知り得ないものへの敬意が、この構成に表れています。
下関の住吉神社
山口県下関市の住吉神社は、長門国一宮です。
大阪の住吉大社が和魂、下関が荒魂を祀るとされます。
神功皇后が遠征から帰るとき、住吉三神が「我が荒魂を穴門(下関)に祀れ」と告げたと日本書紀は記します。
下関は、本州と九州のあいだの海峡にあたります。潮の流れが速く、航行の難所でした。
荒々しい面を、荒れる海に祀ったという形です。
本殿は室町時代の建築で、国宝に指定されています。
和歌の神になる
住吉の神は、中世に和歌の神とされました。
玉津島の神・住吉の神・柿本人麻呂 = 和歌三神
住吉の神が老人の姿で現れ、和歌を詠むという話が広まります。
能の「高砂」では、住吉の松と高砂の松が夫婦になぞらえられます。
高砂や この浦舟に 帆を上げて
結婚式で謡われる「高砂」は、ここから来ています。
海の神が、長寿と夫婦円満の象徴にもなりました。
表筒男命の家系図と家族
表筒男命の性格と人物像
表筒男命は、見える面を担う神です。
底も中も見えません。人が知り、恐れ、頼るのは表面だけです。
それでいて、三柱そろってはじめて海になります。
見える部分だけを神にすることもできたはずです。しかしそうしませんでした。
知り得ないものも含めて全体を捉える。この構成の取り方に、古代の海への向き合い方が表れています。
表筒男命を祀る神社
表筒男命は、住吉三神の一柱として祀られます。
山口県下関市の住吉神社は長門国一宮で、三神の荒魂を祀るとされます。本殿は室町時代の建築で、国宝です。
福岡市の住吉神社も古く、筑前国一宮とされます。大阪・下関・博多の三社を、日本三大住吉と呼ぶことがあります。
表筒男命が現代に残した痕跡
住吉の神は、謡曲に残りました。
高砂: 能の演目。住吉と高砂の松を夫婦になぞらえる。結婚式で謡われる。
ウワベ: 「ウワ(上・表)」に由来する語。表面にあるものを指す。
表筒男命のご利益
海上安全
航海を司る神であることによる。
和歌上達
和歌三神のひとつとされることによる。
夫婦円満
謡曲「高砂」で住吉の松が夫婦になぞらえられたことによる。
表筒男命についてよくある質問
表筒男命とはどんな神様ですか。
住吉三神の一柱で、海の表面を司ります。イザナギが禊をしたとき、水の表面で身を洗って生まれました。
三柱のなかでどんな位置ですか。
禊の最後に生まれた神です。船が実際に触れるのは海の表面だけであるため、もっとも航海に近い位置にいるといえます。
下関の住吉神社との関係は何ですか。
神功皇后が遠征から帰る際、住吉三神が「我が荒魂を穴門に祀れ」と告げたと日本書紀は記します。それが下関の住吉神社です。
表筒男命と併せて覚えたい言葉・用語
禊(みそぎ)
水で身を洗い、穢れを落とすこと。イザナギはこれによって三貴子を生んだ。