占いの神。亀卜を司る。
櫛真智命とは何の神様か
櫛真智命はひとことで言えば占いの神です。奈良の天石立神社などに祀られます。
古代の占いは太占(ふとまに)と亀卜(きぼく)が中心でした。骨や甲羅を焼き、そのひび割れで神意を読みます。
宮中の卜部(うらべ)がこれを担いました。吉田神道を開いた吉田家も、この卜部の系統です。
櫛真智命の漢字表記と読み方
読みは「くしまち」です。「クシ」は奇(くす)しき、つまり不思議なという意味です。
「マチ」は待ちとする説があります。占いの結果を待つ、あるいは神意を待つという意味です。
「マチ(真智)」を智慧と読む解釈もあります。
いずれにせよ、人が知り得ないことを知る働きを指す名です。
櫛真智命(くしまちのみこと)
一般的な表記。
久志真知命(くしまちのみこと)
別の字を当てた表記。
櫛真智命の物語
太占という占い
亀卜という占い
後に、亀卜(きぼく)が伝わりました。中国から入った方法です。
亀の甲羅を焼き、ひび割れで占う。
亀卜は、太占より格の高い占いとされました。
宮中では、天皇の即位に関わる重要な占いに亀卜が用いられました。
大嘗祭で使う米を作る土地を決めるとき、いまも亀卜が行われます。悠紀(ゆき)・主基(すき)という二つの地方を、亀の甲羅で選びます。
2019年の大嘗祭でも実施されました。
卜部という一族
占いを担ったのは、卜部(うらべ)という職能集団です。
ウラ(占) ─ 占うこと
ベ(部) ─ 職能集団
「ウラナウ」という語は、この「ウラ」に由来します。「ウラ」は心を意味し、表に出ない内側を読むことを指しました。
卜部は対馬・壱岐・伊豆から選ばれました。海に囲まれた土地で、亀が得やすかったためとされます。
この一族から、後に吉田兼倶が出て吉田神道を開きました。
なぜ占いが必要だったか
古代の政治において、占いは意思決定の手続きでした。
都をどこに置くか。
戦を起こすか。
祟りの原因は何か。
判断の責任を、人ではなく神意に帰する仕組みです。
決めたのは神である、という形をとることで、決定に権威が与えられました。
「政(まつりごと)」という語が、「祭り」と同じであることは偶然ではありません。祭祀と政治は、もともと同じものでした。
櫛真智命の家系図と家族
櫛真智命のきょうだい: アメノコヤネ占いを担う
櫛真智命の性格と人物像
櫛真智命は、職能そのものの神です。
物語がなく、名だけが伝わります。しかしその名は、占いという行為を指しています。
古代において、占いは迷信ではなく制度でした。国家の意思決定に組み込まれた手続きです。
その制度を司る神として、この神は置かれました。
大嘗祭の亀卜がいまも行われていることを考えると、この神が担った働きは、1,300年を超えて続いていることになります。
櫛真智命を祀る神社
櫛真智命を祀るのは、奈良県橿原市の天香山神社とされます。延喜式神名帳の天香山坐櫛真命神社にあたるという見方が広く知られますが、社が現在の祭神を公表しているものは見つけられませんでした。
春日大社の摂社にもこの神が祀られます。藤原氏が祭祀を担ったことと関わるとみられます。
占いを司る神を祀る社は多くありませんが、卜部の出身地とされる対馬・壱岐・伊豆には、占いに関わる伝承が残ります。
櫛真智命が現代に残した痕跡
櫛真智命の職能は、言葉と行事に残りました。
うらなう: 「ウラ(心)」を読むことに由来する語。表に出ない内側を知る意味。
亀卜: 亀の甲羅を焼いて占う方法。大嘗祭でいまも行われる。
吉田神道: 卜部の系統から出た吉田兼倶が開いた神道の一派。
櫛真智命のご利益
開運
占いを司る神であることによる。
所願成就
神意を知る働きによる。
厄除け
凶を避ける占いの働きによる。
櫛真智命についてよくある質問
櫛真智命とはどんな神様ですか。
占いを司る神です。古代の占いである太占や亀卜に関わり、宮中で占いを担った卜部の祖神とされます。
亀卜はいまも行われているのですか。
大嘗祭で使う米を作る土地を決める際に行われます。2019年の大嘗祭でも実施されました。
なぜ占いが重んじられたのですか。
古代の政治において、占いは意思決定の手続きでした。判断を神意に帰することで、決定に権威が与えられました。