春日社に関わる攘災の神。天狗を追い払ったと伝えられる。
ツノフリハヤブサミョウジンとは何の神様か
ツノフリハヤブサミョウジンはひとことで言えば災いを攘う神です。春日社に関わる祭神で、角振隼総別命とも言われます。
春日大社の末社である本宮椿本神社と、奈良市角振新屋町の隼神社に祀られます。
藤原忠実が天狗に襲われたとき、この神を呼んで追い払ったという話が伝わります。
ツノフリハヤブサミョウジンの漢字表記と読み方
読みは「つのふりはやぶさみょうじん」です。「ツノフリ」は角を振る、「ハヤブサ」は隼を指します。
角と隼という、二つの荒々しいものが名に並びます。
明神(みょうじん)は、霊験あらたかな神を指す中世以降の呼び方です。
角振神と隼神は、もとは別の神で、父子二座を祀るとする記録もあります。
角振隼総明神(つのふりはやぶさみょうじん)
一般に用いられる表記。
角振隼総別命(つのふりはやぶさわけのみこと)
別の呼び方。
角振神(つのふりのかみ)
角振神と隼神を分けて呼ぶときの名。
角明神(つののみょうじん)
中外抄での呼び名。
ツノフリハヤブサミョウジンの物語
父子二座
江戸時代中期、村井古道が著した奈良坊目拙解にこうあります。
角振神は、火酢芹命の御子なり。隼神は父なり。父子二座を祀る。
少祠なく、柿の大木があり、神木と号す。
角振神が子、隼神が父という関係です。
火酢芹命は、ホデリの別名です。海幸山幸の兄にあたります。
春日大社の中院に鎮座する椿本神社の説明書では、角振神は勇猛果敢な大宮の脊属神であり、天魔退散・攘災の神とされます。
天狗を追い払う
この神の霊験を伝えるのが、中外抄です。
角振明神が篤く信仰されており、その板敷を寝殿の板敷より高くしていた。
藤原忠実が東三条殿で真言法を受けていたとき、天狗法師が数人現れた。
そこで角明神を呼んで追い払った。
天狗を追い払う神です。
この話は、延慶二年(一三〇九年)成立の春日権現験記第四巻「天狗参入東三条殿事」に、夢の中の話として絵画化されました。
今昔物語集巻十九にも、この社の神が現れて、いつも拝んでいた僧に報恩する話が収められています。
摂関家の鎮守
この神は、藤原氏の邸宅に勧請されました。
平安時代初期、平安京の朱雀院に隼神社が勧請される。
十世紀初頭までに、左京へ移される。
十世紀までに、摂関家の主要邸宅の一つ東三条殿の西北隅にも勧請され、鎮守として尊重された。
永延元年(九八七年)十月、一条天皇の東三条殿への行幸を受けて従四位下に加階されました。
寛弘三年(一〇〇六年)三月、一条天皇の里内裏となったことで正二位に。
久安六年(一一五〇年)、近衛天皇の元服の里内裏となった際にも加階を受けました。
邸宅の格が上がるたびに、鎮守の神階も上がるという形です。
広島にもあった
この神は、奈良と京都だけの神ではありません。
広島県安芸郡府中町にも、角振神社が所在した。
天文年間にこの社が崩壊したため、角振隼明神は末社の山王神社、いまの三翁神社に合祀されました。
国内神名帳には「正四位三前」と記録されています。
奈良、京都、広島。離れた土地に同じ名の社があることは、この神の信仰がある時期に広く行われたことを示します。
多聞院日記の天文十二年(一五四三年)七月一日条にも記載があります。
ツノフリハヤブサミョウジンの家系図と家族
ツノフリハヤブサミョウジンの親: ホデリ火酢芹命の御子とする
ツノフリハヤブサミョウジンの性格と人物像
ツノフリハヤブサミョウジンは、追い払う神です。
創り出すことも、恵むこともしません。天魔を退散させ、災いを攘う。それだけが仕事です。
しかし、その仕事は摂関家の邸宅で必要とされました。
天狗が現れれば呼ばれ、天皇が行幸すれば神階が上がる。権力の中枢を守る神として、平安時代を通じて重んじられました。名の「角」と「隼」が、その荒々しい役目を表しています。
ツノフリハヤブサミョウジンを祀る神社
この神を祀るのは、春日大社の末社である本宮椿本神社と、奈良市角振新屋町の隼神社です。
平安時代には、平安京の朱雀院や摂関家の東三条殿にも勧請されました。
広島県安芸郡府中町にも角振神社がありましたが、天文年間に崩壊し、末社の山王神社、いまの三翁神社に合祀されました。
本宮椿本神社(ほんぐうつばきもとじんじゃ)
春日大社の末社
角振神、すなわちこの神を祀る社。春日大社の本社境内にある。
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ツノフリハヤブサミョウジンが現代に残した痕跡
ツノフリハヤブサミョウジンの名は、奈良の町名に残りました。
角振新屋町: 奈良市の町名。隼神社が鎮座する。
春日権現験記: 延慶二年成立。天狗を追い払う話が絵画化されている。
中外抄: 藤原忠実の言談を記した書。角明神が天狗を追い払った話を伝える。
ツノフリハヤブサミョウジンのご利益
厄除け
攘災の神とされることによる。
魔除け
天魔退散の神とされることによる。
ツノフリハヤブサミョウジンについてよくある質問
ツノフリハヤブサミョウジンとはどんな神様ですか。
春日社に関わる祭神で、災いを攘う神とされます。春日大社の末社である本宮椿本神社と、奈良市の隼神社に祀られます。
天狗の話とは何ですか。
藤原忠実が東三条殿で真言法を受けていたとき天狗法師が数人現れ、角明神を呼んで追い払ったという話が中外抄に載ります。
角振神と隼神は同じですか。
奈良坊目拙解では、角振神は火酢芹命の御子、隼神はその父とし、父子二座を祀るとしています。