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創世神話一覧|世界はどう始まったか、4つの神話をくらべる

世界は、どうやって始まったのか。

すべての神話がこの問いから始まります。そして、答えがまったく違います。

日本は、かき混ぜて作った。
北欧は、巨人を殺して切り分けた。
ギリシャは、何もない所から自然に生まれた。
エジプトは、都市ごとに別の話がある。

このページでは、収録している4つの神話の始まりを並べます。

創世神話とは

世界の始まりを語る神話です。天地・海・山・人間・秩序が、どのようにして今の形になったのかを説明します。

どの民族の神話にも、ほぼ必ずあります。世界がどこから来たのかは、人が最初に立てる問いだからです。

注意したい点があります。

創世神話は「昔あった出来事の記録」ではありません。

いま目の前にある世界がなぜこうなっているのかを、物語の形で説明したものです。だから、その土地の地形や暮らしがそのまま反映されます。

創世神話と創造神話の違い

混同されやすい二語ですが、指す範囲が違います。

創世神話 … 世界がどう始まったかの物語ぜんたい
創造神話 … そのうち「誰かが作った」という筋のもの

つまり創造神話は創世神話の一種です。

すべての創世神話が「創造」ではありません。 ギリシャのように誰も作っていない神話があります。カオスから神々がひとりでに生まれてきます。作り手がいません。

一方、日本の国生みや北欧の巨人解体は、明確な作り手がいるので創造神話にあたります。

この違いは、あとで見るように神の位置づけまで変えます。

日本神話の創世|かき混ぜて島を作った

はじめに天と地が分かれ、高天原アメノミナカヌシが現れます。ただしこの神は、

現れて、すぐに姿を隠します。

何もしません。最初の神が何もしないのは日本神話の際立った特徴です。

実際に世界を作るのはイザナギイザナミです。天の浮橋に立ち、天の沼矛で海をかき混ぜ、

矛の先から滴った塩が固まって島になった。

これが国生みです。そのあと二柱は神々を生んでいきます。

注目すべきは手順です。

最初、女神イザナミから声をかけて子を生んだところ、不完全な子(ヒルコ)が生まれました。天の神に相談すると「女から先に声をかけたのがよくない」と言われ、やり直します。

手順を間違えると、失敗する。

儀式の順序が結果を決めるという考え方が、世界の始まりに埋め込まれています。

北欧神話の創世|巨人の死体から作った

北欧は、他の3つとまったく違います。

はじめに灼熱の国と極寒の国があり、その間の裂け目で氷が溶け、最初の巨人ユミルが生まれます。

そしてオーディンら三兄弟が、このユミルを殺します。

肉を大地に、骨を山に、歯を岩に、血を海に、頭蓋骨を空にした。

他の神話が「産む」「作る」のに対し、北欧は解体します

世界は、死体でできています。

さらに、この世界には最初から終わりが決まっています

ラグナロクで、この世界は滅びる。

作られた瞬間から滅びが予定されている創世神話は、世界的にも珍しいものです。

人間は、浜辺に流れ着いた流木から作られました。木に息と知恵と血色を与えたのが最初の人間です。

ギリシャ神話の創世|誰も作っていない

ギリシャには作り手がいません

はじめにカオスがあります。これは「混沌」と訳されますが、原語では

「大きく口を開いた空虚」

に近い言葉です。ぐちゃぐちゃに混ざった状態ではなく、何もない裂け目です。

そこからガイア(大地)が生まれます。誰かが産んだのではなく、ひとりでに現れます

ガイアは単独でウラノス(天)を産み、それを夫にします。以後は延々と親子の争いが続きます。

ウラノスは息子クロノスに倒され、クロノスは息子ゼウスに倒される。

世界は作られたのではなく、現在の秩序が力ずくで確立されたという形をとります。

ゼウスは創造神ではありません。 前の王を倒して今の体制を作った、いわば三代目の支配者です。

エジプト神話の創世|都市ごとに別の話がある

エジプトには、正解の創世神話がありません。

都市ごとに別の話があり、しかもどれも並立したままです。

ヘリオポリス … アトゥムが原初の水ヌンから丘として現れ、自らの体から神々を生む
メンフィス … プタハが心に思い、舌で名を唱えると、それが存在になる
ヘルモポリス … 八柱の神々が水と闇から世界を生む
テーベ … アメンがすべての始まりであり、他の神々はその現れにすぎない

どれか一つに統一されたことはありません。矛盾したまま3000年続きました

共通するのは、始まりが「水」であることです。

ヌンという果てのない水があり、そこから丘が盛り上がる。

これはナイルの氾濫そのものです。水が引くと、肥沃な土の丘が現れる。毎年目の前で起きていた光景が、世界の始まりの形になっています。

メンフィスの説だけは異質で、言葉が世界を作ります。心で思い、名を唱えると存在になる。他の神話に見られない発想です。

世界は「生まれた」のか「作られた」のか

並べると、はっきり二つに分かれます。

神話始まりにあったもの世界のでき方作り手
日本天と地の分かれかき混ぜて島を作ったイザナギ・イザナミ
北欧火と氷の裂け目巨人を解体したオーディンら三兄弟
ギリシャカオス(空虚)ひとりでに生まれたいない
エジプトヌン(原初の水)水から丘が現れた都市ごとに別の神

作り手がいるのは日本と北欧、いないのがギリシャです。エジプトはその中間で、神が現れはしますが「作った」というより自分自身が世界になっていきます

この違いは、神の位置づけを変えます。

作り手がいる神話では、神は世界の外にいる。
いない神話では、神は世界の一部でしかない。

ガイアは大地を作ったのではなく、大地そのものです。ゼウスも世界を作っていないので、倒される可能性が最初から残っています。実際ギリシャ神話では、ゼウスを倒す子が生まれるという予言が繰り返し出てきます。

一方イザナギは世界の外から島を作ったので、倒される話がありません

もうひとつ、始まりが水である神話が多い点も見えます。エジプトのヌン、日本の海、北欧の溶けた氷。水は形がなく、何にでもなれるからだと考えられます。

始まりの語り方に、その土地が出る

創世神話は、その土地で毎年起きていたことの写しになっています。

エジプト … ナイルが引くと肥沃な丘が現れる → 水から丘が生まれる
日本 … 島国。海から陸が立ち上がる → 海をかき混ぜて島を作る
北欧 … 氷と火山。厳しく、いずれ終わる → 死体から作り、いずれ滅びる
ギリシャ … 都市国家が争い、覇権が移る → 親子で王位を奪い合う

世界の始まりを説明しているようで、実際には自分たちの暮らしを説明しています

だからこそ、神話は当てにならない歴史書ではなく、その民族の世界の見方の記録として読めます。

創世神話についてよくある質問

創世神話と創造神話は何が違うのですか。

創世神話は世界の始まりを語る物語ぜんたい、創造神話はそのうち「誰かが作った」という筋のものです。創造神話は創世神話の一種で、ギリシャのように作り手がいない創世神話もあります。

日本の創世神話はどんな話ですか。

イザナギとイザナミが天の浮橋から天の沼矛で海をかき混ぜ、矛の先から滴った塩が固まって島になりました。国生みといいます。最初は手順を誤って失敗し、やり直しています。

世界の創世神話に共通点はありますか。

始まりが水であることが多い点です。エジプトの原初の水ヌン、日本の海、北欧の溶けた氷。水は形がなく何にでもなれるためと考えられます。

エジプトの創世神話が複数あるのはなぜですか。

都市ごとに信仰する神が違い、それぞれが自分の神を始まりに置いたためです。ヘリオポリス、メンフィス、ヘルモポリス、テーベで別の話があり、統一されないまま3000年続きました。

ギリシャ神話に世界を作った神はいますか。

いません。カオスから神々がひとりでに生まれます。ゼウスも創造神ではなく、前の王クロノスを倒して今の秩序を作った三代目の支配者です。

北欧神話で世界はどうやってできたのですか。

巨人ユミルの死体からです。オーディンら三兄弟がユミルを殺し、肉を大地に、骨を山に、血を海に、頭蓋骨を空にしました。

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このページに出てきた言葉

高天原(たかまがはら)

天上にある神々の国。アマテラスが治める。

ラグナロク(Ragnarök)

北欧神話の終末。神々と巨人が戦い、双方がほぼ全滅して世界が焼け落ち、海に沈む。そののち新しい大地が浮かび上がる。

ヌン(Nun/原初の水)

世界が始まる前からある、暗く動かない水。ここから原初の丘が現れて創造が始まり、世界が終わるときはすべてここへ戻る。