洩矢神の子で守矢氏の二代目。千頭の鹿を得て子を千鹿頭と名づけた。
モリタカとは何の神様か
モリタカはひとことで言えば狩りをする二代目です。洩矢神の子で、守矢氏の二代目とされます。妹にタマルヒメがいます。
父から祭政官の地位を引き継ぎ、諏訪大神と狩りに出て千頭の鹿を得ました。
そのことから、自分の子を千鹿頭神と名づけたと伝えられます。
モリタカの漢字表記と読み方
読みは「もりたか」が一般ですが、「もりや」「もりた」「もりたく」とも読まれます。
読みが四通りもある神です。
「もりや」と読むと、父洩矢神と同じ音になります。そのため江戸末期には、この神を洩矢神そのものとみる説も現れました。
しかし神長守矢氏系譜は、洩矢神をこの神の父とし、両者を分けています。
守宅神(もりたかのかみ)
神長守矢氏系譜での表記。
守宅神(もりやのかみ)
別の読み方。父の名と同じ音になる。
守田ノ神(もりたのかみ)
別名として挙げられる。
洩宅神(もりたくのかみ)
別の表記。
モリタカの物語
千頭の鹿
この神を語るのは、神長守矢氏系譜の短い一節です。
守宅神、生まれて霊異幹力あり。父に代りて弓矢を負ひ、大神に従ひ遊猟し、千の鹿を得る。
一男有りて、これを名つけて千鹿頭神と曰ふ。
千頭の鹿を得たから、子の名が千鹿頭になった。
諏訪信仰は、狩猟と深く結びついています。上社の御頭祭では、いまも鹿の頭が供えられます。
生まれつき優れた力を持ち、父に代わって弓矢を負う。この神の描かれ方は、狩る者そのものです。
神階の記録
この神には、国の記録に載った可能性があります。
日本三代実録の貞観元年(八五九年)二月十一日条に、信濃国の神々の神階昇進が記されます。
建御名方神(正二位)。
八坂刀売神(従二位)。
生島神・足島神(正四位下)。
そして宝宅神(従五位上)。
この「宝宅神」が、印本では「守宅神」となっています。
写しの違いによるものですが、もし守宅神が正しければ、諏訪の神々と並んで神階を受けたことになります。
父と同じか、別か
この神をめぐる最大の論点は、父との区別です。
山田肇(一九二九年)は、こう書いています。
モレヤもモリヤも同語ではないか。洩矢の子は直ちに千鹿頭であらう。
然るに此の間に守矢を置くのは、洩矢神社と守矢大神祠とがあり、これを別神と認めた作為である。
つまり、社が二つあったから神も二柱にしたのではないか、という指摘です。
一方大和岩雄(一九九〇年)は別の見方をします。狩猟の神である洩矢神が農耕の性格を持つようになったとき、狩猟的な洩矢と農耕的な守宅を分けたのではないか、というものです。
守達神との重なり
さらにややこしいのは、守達神との関係です。
守達神 ─ 長野市七二会の守田神社の祭神。タケミナカタの第五子とされる。
神長守矢氏系譜は、守宅神の別名として守田ノ神を挙げます。
そのため、守達神とこの神が同一視されることがあります。
しかし守達神はタケミナカタの子、この神は洩矢神の子です。系譜の立場が正反対です。
諏訪では、勝った側と負けた側の神が、名の似ることによって重ねられていきました。
モリタカの家系図と家族
モリタカの性格と人物像
モリタカは、狩る神です。
生まれつき力に優れ、父に代わって弓矢を負い、千頭の鹿を得ました。それだけが伝えられています。
しかし、その一行が諏訪信仰の核心に触れています。
諏訪は、獣を獲ることを罪としない神として知られました。鹿食免という札を出し、狩りと肉食を許しました。この神の千頭の鹿は、その信仰の原点にある数字です。
モリタカを祀る神社
この神を祀る社は、諏訪周辺にあります。
信濃国官社諏訪神社神長官守矢家略系図では、守屋山に鎮座する神とされています。
長野市七二会の守田神社は守達神を祀りますが、この神と同一視されることがあります。
茅野市の神長官守矢史料館では、守矢氏に伝わる文書が公開されています。
モリタカが現代に残した痕跡
モリタカの名は、守矢氏の系図に残りました。
神長守矢氏系譜: 明治初期に書かれた守矢氏の家系図。この神を二代目とする。
御頭祭: 諏訪大社上社の祭。鹿の頭を供える。
鹿食免: 諏訪大社が出した札。狩りと肉食を許すもの。
守屋山: 諏訪盆地の南の山。この神が鎮座するとする系図がある。
モリタカのご利益
狩猟守護
千頭の鹿を得た伝えによる。
武運長久
父に代わって弓矢を負ったことによる。
モリタカについてよくある質問
モリタカとはどんな神様ですか。
洩矢神の子で、守矢氏の二代目とされる神です。諏訪大神と狩りに出て千頭の鹿を得たことから、子を千鹿頭神と名づけたと伝えられます。
父の洩矢神と同じ神ですか。
神長守矢氏系譜は父子として区別します。ただし読みが同じ「もりや」にもなるため、江戸末期には同一視する説も現れました。
守達神と同じですか。
同一視されることがあります。ただし守達神はタケミナカタの子、この神は洩矢神の子であり、系譜上の立場は正反対です。