タケミナカタの妃。諏訪下社に祀られる。
八坂刀売神とは何の神様か
八坂刀売神はひとことで言えば諏訪の女神です。諏訪大社下社の祭神で、タケミナカタの妃とされます。
記紀に一切登場しません。諏訪の地に固有の女神で、由来を伝える古い記録もほとんど残っていません。
下社の春宮と秋宮を年に二度行き来するとされ、その遷座祭がいまも行われています。
八坂刀売神の漢字表記と読み方
読みは「やさかとめ」です。「トメ」は女性を指す古語で、「ヒメ」と同じ働きをします。
「ヤサカ」については定説がありません。八尺(長さ)、弥栄(いやさか/繁栄)、坂の多い土地など、複数の説があります。
名の意味が確定していないこと自体が、この神の記録の乏しさを表しています。
八坂刀売神(やさかとめのかみ)
諏訪大社での表記。
八坂刀売命(やさかとめのみこと)
「命」を用いた表記。
八坂刀売神の物語
記紀に載らない神
八坂刀売神は、古事記にも日本書紀にも出てきません。
夫とされるタケミナカタは、国譲り?の場面で古事記に登場します。しかし妃については何も記されていません。
諏訪には、記紀とは別の神話があった。
中世に編まれた諏訪の縁起に、ようやくその名が現れます。つまり、朝廷が編んだ歴史書の外側で、独自に伝えられてきた神です。
春宮と秋宮を行き来する
諏訪大社の下社は、春宮と秋宮の二つに分かれています。
二月一日 ─ 秋宮から春宮へ
八月一日 ─ 春宮から秋宮へ
神が年に二度、住まいを移すとされます。この遷座祭(せんざさい)はいまも行われています。
八月一日の遷座はお舟祭りと呼ばれ、巨大な柴舟を曳く行事として知られます。
神が季節ごとに住み替えるという形は、全国でも例の少ないものです。
御神渡りは通い路
冬の諏訪湖では、氷が盛り上がって筋状に走る現象が起こります。御神渡り(おみわたり)と呼ばれます。
上社のタケミナカタが、下社の八坂刀売神のもとへ通う道。
そう説明されてきました。
諏訪大社では、その形を見てその年の作柄や世の中を占う神事が続けられています。室町時代からの記録が残り、気候変動の資料としても使われています。
近年は暖冬で出現しない年が増えています。
化粧水の伝え
上社から下社へ移るとき、八坂刀売神は化粧に使う湯を綿に含ませて持っていったといいます。
その綿から湯が滴った場所が、下諏訪の温泉になったと伝えられます。
神の化粧水が、温泉になった。
下諏訪は中山道で唯一の温泉宿場でした。この伝えは、温泉の由来を説明するものとして語られてきました。
八坂刀売神の家系図と家族
八坂刀売神の性格と人物像
八坂刀売神は、記録の少なさが際立つ神です。
物語らしい物語がなく、名の意味すら定まっていません。それでいて、年二回の遷座という大がかりな行事が、いまも続いています。
書かれた神話を持たないまま、行事だけが千年単位で残ったという形です。
諏訪という土地が、記紀の外に独自の信仰を保ち続けたことを示す存在といえます。
八坂刀売神を祀る神社
八坂刀売神を祀るのは、諏訪大社の下社が中心です。
諏訪大社は上社(本宮・前宮)と下社(春宮・秋宮)の四宮からなり、下社の二宮に八坂刀売神が祀られます。
全国に約25,000社あるとされる諏訪神社のうち、八坂刀売神をあわせて祀る社も各地にあります。
諏訪大社 下社秋宮(すわたいしゃ しもしゃあきみや)
信濃国一宮
八月から翌年一月まで神が坐すとされる。
八月一日の遷座はお舟祭りと呼ばれる。
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諏訪大社 下社春宮(すわたいしゃ しもしゃはるみや)
信濃国一宮
二月から七月まで神が坐すとされる。
周辺の宿をさがす
八坂刀売神が現代に残した痕跡
八坂刀売神は、諏訪の行事に残りました。
御神渡り: 諏訪湖の氷が筋状に盛り上がる現象。神の通い路とされる。
お舟祭り: 八月一日の遷座祭。巨大な柴舟を曳く。
下諏訪温泉: 神の化粧水が滴って湧いたと伝えられる。中山道唯一の温泉宿場だった。
八坂刀売神のご利益
縁結び
タケミナカタの妃とされることによる。
安産
女神として信仰されてきたことによる。
美容
化粧水が温泉になったという伝えによる。
八坂刀売神についてよくある質問
八坂刀売神とはどんな神様ですか。
諏訪大社下社の祭神で、タケミナカタの妃とされる女神です。記紀には登場せず、諏訪の地に固有の神です。
なぜ春宮と秋宮があるのですか。
神が年に二度、住まいを移すとされるためです。二月に春宮へ、八月に秋宮へ遷る遷座祭がいまも行われています。
御神渡りとは何ですか。
冬の諏訪湖で氷が筋状に盛り上がる現象です。上社のタケミナカタが下社の八坂刀売神のもとへ通う道とされてきました。
八坂刀売神と併せて覚えたい言葉・用語
国譲り(くにゆずり)
オオクニヌシが葦原中国の統治権を天津神に明け渡した出来事。