諏訪上社の冬の神事で、三つの蛇体を依り代とした神霊。
ソソウノカミとは何の神様か
ソソウノカミはひとことで言えば蛇の形で迎えられた神です。諏訪大社上社で中世に行われた冬の神事において、三つの蛇体を依り代とした神霊を指します。
守矢氏の古文書では「そゝう神」と表記されます。
旧暦十二月、地中に掘った御室という建物のなかで、茅で作った蛇に神霊が込められました。
ソソウノカミの漢字表記と読み方
読みは「そそうしん」または「そそうのかみ」です。
漢字が定まっていません。守矢氏の古文書は、仮名で「そゝう神」と書いています。
「そそ」は女性器を指す語でもあったとされます。
そこから女性的精霊と解する説が生まれました。一方、「祖宗(そそう)」、つまり祖霊と読む説もあります。漢字が当てられなかったこと自体が、この神の性格を語っています。
ソソウ神(そそうしん)
現代の書き方。
そゝう神(そそうのかみ)
守矢氏の古文書での表記。
祖宗神(そそうしん)
祖霊神と解する説による当て字。
ソソウノカミの物語
御室という建物
中世の諏訪郡では、旧暦十二月になると大がかりな準備が始まりました。
上社の摂社の筆頭・前宮の位置する神原(ごうばら)に、御室(みむろ)と呼ばれる広大な竪穴建物を作る。
大祝以下の神職が参籠し、穴巣始(あなすはじめ)という儀式を始める。
大祝たちは、御室が撤去される三月中旬までその中で神事を行いました。
三か月にわたる籠りです。地面を掘り下げた建物で冬を越すという形は、冬眠を模したものとみられています。
小蛇から大蛇へ
御室のなかで起きることは、諏方大明神画詞(一三五六年)に記されています。
十二月二十二日 ─ 大祝が御室に入る。ミシャグジを依り憑けた笹が入れられる。
二十三日 ─ 内県・外県・大県から一体ずつ、茅製の小さな蛇体三つが納められる。
二十五日 ─ 全長五丈五尺、太さ一尺五寸の大きな蛇体三つが納められる。
小蛇が二日後に大蛇になる、という組み立てです。
田中基は、これを小蛇が冬眠に入り、ミシャグジの力で一夜のうちに大蛇へ成長する神霊の増殖を表すと解しました。
水平に現れる神
祝詞には、この神の現れ方が記されます。
「道」の「口・中・尻」にそそう神が現れ給うたので、喜んで仕える。
出現の場所は、はっきり特定されています。
こしき原(諏訪市豊田の有賀) → 真志野(諏訪市湖南) → 所政社(大祝の館の入口付近)。
諏訪湖の方角から神原まで、水平に近づいてくるという性質を持ちます。
上空から降りてくるミシャグジとは、方向が正反対です。天から降りる神と、湖から来る神が、御室のなかで出会います。
二つの説
この神の正体については、二つの説があります。互いに排他的ではありません。
女性的精霊説 ─ 「そそ」が女性器を指すことから。ミシャグジを男性的精霊とし、御室を大地の子宮とみる。二つの精霊の聖婚を表すと解する。
祖霊神説 ─ 「祖宗神」と読み、大祝の祖霊とみる。他界から来る龍蛇の姿の祖霊が籠ることで、衰えた生命力を増やすと解する。
前者では、参籠する大祝や神使の童男は、二つの精霊から生まれた聖なる子供とされます。
十二月二十五日に演じられた神楽歌がかなり露骨な内容であることが、この説の根拠のひとつになっています。
ソソウノカミの家系図と家族
ソソウノカミの性格と人物像
ソソウノカミは、漢字を持たなかった神です。
諏訪の古文書は、仮名で「そゝう神」と書きました。意味が分からなかったのではなく、書き表す字がなかったのです。
そのため、後の人が二通りの読み方を与えました。女性の精霊か、祖先の霊か。
御室の神事は中世以降に廃れ、いまは行われていません。前宮の境内に御室社が残るだけです。記録だけが残り、行いが失われた神といえます。
ソソウノカミを祀る神社
この神を祀る独立した社はありません。諏訪大社上社前宮の境内の一角に、御室社が残っています。
御室神事を記念する社で、上社の下十三所の第八番にあたります。
御室そのものは中世以降に失われ、いまは何も残っていません。神事の記憶を留めるためだけの社という形です。
ソソウノカミが現代に残した痕跡
ソソウノカミの名は、古文書のなかに残りました。
御室神事: 諏訪上社で旧暦十二月から三月まで行われた籠りの神事。中世以降に廃れた。
ミシャグジ: 諏訪の精霊。上空から降りるとされ、この神と対をなす。
諏方大明神画詞: 一三五六年成立。御室神事の次第を伝える。
神長官守矢史料館: 長野県茅野市。守矢氏に伝わる文書を公開する。
ソソウノカミのご利益
子孫繁栄
生命の再生と繁殖を表すと解されることによる。
五穀豊穣
冬の籠りと春の再生を担う神事による。
ソソウノカミについてよくある質問
ソソウノカミとはどんな神様ですか。
諏訪大社上社で中世に行われた冬の神事において、三つの蛇体を依り代とした神霊です。守矢氏の古文書では「そゝう神」と表記されます。
ミシャグジと同じですか。
別に扱われます。ミシャグジは上空から降りるとされ、この神は諏訪湖の方角から水平に現れるとされます。御室のなかで両者が出会う形になっています。
いまも神事は行われていますか。
御室関連の神事は中世以降に廃れ、いまは行われていません。諏訪大社上社前宮の境内に御室社が残るだけです。